turn back

 
「売り言葉に買い言葉」・・・昨日の俺達はまさにその通りだった。

ミリアリアと口論になった。

原因は些細な事だとこの時は思っていたが、実際は根の深いドロドロしたものだったと後になって痛感したものだ。




「コーディネイターに私の気持ちなんて解らないわ!」

普段の彼女なら間違っても口にしない言葉にオレはカッとして。

「ああ・・・そうかよ!オレにだってナチュラルのオンナの考えていることなんざ理解できねえよ!」

と、きり返してしまっていた。



何故あそこまで、彼女がオレを拒絶したのか理由も解らないままに時間だけが過ぎていって・・・
そして夜になってラミアス艦長から直接呼び出しを受けて初めて、オレは事の重大さを知った。














───ディアッカ君。あなたに話すかどうかで迷ったのだけれど・・・一応言っておいた方がいいかと思って・・・。




「実は・・・先日エターナルにミリアリアさんと一緒に出向いた時の事なのだけれど・・・・。彼女ね、あなたと凄い噂で
その・・・あなたが・・・退屈凌ぎにナチュラルの女にちょっかいって出していて・・・それが彼女だって広まっていたの」

そう言って俯いた艦長の顔はとても辛そうだった。

「ヒソヒソ話も絶えなくて・・・誰かが彼女にあなたの婚約者の話をしたらしいわ・・・。もっとも彼女は以前からあなたの
婚約者の事は名前まで知っていたのだけれど・・・直接言われたらいい気はしないわ・・・」

「オレの婚約者・・・?ああ・・・確かに親同士が決めた奴がいたな・・・もう何年も会ってないけどな。今まで忘れてたよ」

事実、本当に忘れていたのだ。まあどうせオレがMIAじゃ婚約も破棄されてるだろうけれど。
だが・・・ミリアリアがその事を知っていたというのなら彼女はオレをどう思っただろうか?
そしてここでオレが気付いたのは・・・。

(・・・!あの写真!)

そうだった・・・彼女は写真をオレに突きつけたではないか!あの写真は・・・誰だ?

オレと噂になるのはもういやだ・・・と彼女は言ったじゃないか・・・。

ということは、あれが・・・多分オレの名ばかりの婚約者なんだ・・・。



───コーディネイターは綺麗だ。程度の差こそあるが・・・大概容姿は整っている。

オレもコーディネイターだ。しかも・・・色々な意味でトップランクに属している。
ミリアリアはナチュラルで・・・決して美人ではないし、何かに秀でた存在でもない。
なのに婚約者もいるコーディネイターのオレに付き纏われたら・・・彼女は自分をどう思う?
からかわれて弄ばれているか、一時しのぎの遊びの相手として・・・自分を慰み者だと思わないか?

そして・・・婚約者の写真をオレに突きつけて・・・。

「誰?このオンナ」なんてオレが言ったら・・・───。







───コーディネイターに私の気持ちなんて解らないわ!







そうさ・・・婚約者の存在を隠して、遊びでミリアリアに付き纏っている最低のオトコだと思うだろうさ・・・。







ホント・・・オレはミリアリアの気持ちなんてまったく解っちゃいなかった。
オレが傍に行けばいくほど・・・彼女を傷つけていたんだから・・・。







───ディアッカ君?


「ああ・・・ごめん。何です?艦長?」

「あなたは・・・ミリアリアさんが好きなのでしょう?だったら・・・護ってあげてちょうだいね・・・」

「何言ってんのさ!オレ・・・ミリアリアには好きだなんて言ったコトないぜ?だってあいつはトールオンリーじゃん?」

「ディアッカ君!」

「何を期待してんだか知らね〜けど!オレらそんなカンケーじゃないからさ・・・気にしないで?」

「・・・・・・」

「もう用事は済んだ?じゃオレ部屋に戻るわ・・・おやすみね!艦長」





















通路の反対側から歩いてくる・・・。

ピンクの軍服を着た茶色いはねっ毛のミリアリア・・・。

お互い何事もなかったかのようにすれ違う。






振り向いて・・・抱き締めたい衝動に駆られる・・・!

だって・・・こんなにも彼女が好きなのに・・・・・・!

でもオレは茨で・・・近づけば彼女に茨の棘が刺さる・・・。

彼女を傷つける棘だらけのオレの腕。

抱けば傷が増えるだけだと知りたくはなかった。








──turn back








なあ・・・おまえに出逢う前に・・・時を戻せたらよかったのにな・・・。











 
 (2004.12.8) (2005・6・21 改稿)

 ※  こういう話は書いていて重いですね。

 YOU ARE MY SECRETに続きます

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