やあ・・・元気にしていたかい・・・?
監獄ノスタルジア(9) Side Ssigh
(こいつ・・・誰?)
オレの前にいるこの男。
なんとなく記憶にはあるが・・・誰だっけ?
亜麻色の髪に色眼鏡・・・おっとりとした感じのよさ・・・。
「あれ?俺のこと覚えてない?君が連行されてきた時も、医務室の件でもミリィの傍にいたんだけれど」
そう言われてオレは思い出した・・・。
いつもミリアリアの隣にいてあれこれ世話してた奴だ。
最初、ミリアリアのカレシかと思ってムッとしたんだけど・・・。
「俺、サイ。サイ・アーガイルていうの。よろしく。
ミリィの件ではすまないことをしたね。ケガはもう大丈夫?」
「ああ・・・問題ないよ。こっちが悪かったんだから別に気にしなくてもいいぜ?」
こいつもヘリオポリスで居合わせたミリアリアの友人だな。
なるほど・・・キラといい、こいつといいひとの良さそうな感じがするわ。
軍人なんて絶対向いてねえわ・・・こんなのばっかでよくオーブまで来れたよなAAは・・・。
ま、そんな艦に墜された俺も俺だけど。
「ミリィ、明日から仕事に戻れるって先生が言ってた。それに君の診察見事だって驚いていたよ。」
サイはディアッカに嬉しそうに告げた。
「大丈夫なのか?ミリアリア。本来長期入院コースなんだぜ?無理させんなよ・・・」
なんかここ数日同じセリフ言ってないか?オレ。
「ミリィが君のことすごく心配してたんだ。酷い扱い受けてないかって。
ここに来たのって、キラにフラガ少佐に俺ぐらいだよね。だったら心配しなくても大丈夫だよね」
「ああ冷遇なんてされてないから大丈夫だよ。つーか!ここホントに戦艦の中なのかぁ?
キラといいおまえといいエロオヤジといい・・・ここの連中ってひと良すぎだぜ」
「そういう君だってコーディネイターエリートのザフトレッドには見えないよ。
フラガ少佐が『エリート?とんでもないよ。ただのエロガキ』だって言ってたもの」
サイはオレを見て呆れ顔で笑った。
「あ・・・退屈だろうって少佐からこれ預かって来たんだけど・・・何?」
怪訝そうに紙袋をヒラヒラさせて、サイは鉄格子のすき間からオレに差し入れた。
中身の見当がつくので、笑いを堪えながら開けてみると・・・。
それは『実録!後ろから前から!揉んで攻めて貫いて!』
ま、要するにエロ本。
「見てみるか・・・?」
と、サイの手に紙袋を渡す。
「うわ・・・凄いね・・・無修正だ・・・これ少佐の趣味なのかな」
サイは顔を赤らめて、それでもしっかりとエロ本をめくっている。
「あのおっさんこんなのばっかだぜ・・・ここにもあるけどこっちも見る?」
以前、ムウが持ってきた本もサイに渡した。
「うわ〜鼻血出そうだね・・・フラガ少佐・・・こういうの好きなんだ・・・」
(とか何とか言って・・・おまえもしっかり見てんじゃん・・・)
「フラガ少佐って地球軍きってのエースMAパイロットなんだよね・・・意外だなあ」
サイのエロ本を捲る手は止まらない。
「まったく何が起こるか分からないよね。君のこと墜したのってフラガ少佐なんだよ。
でなけりゃ君もこうして捕虜なんかになっていなかったかもしれないよね」
眼鏡を上げながら、サイはディアッカに告げた。
ちょっと待て。
今・・・なんか凄いコト聞いたぞ・・・。
───マジかよそれ・・・オレあんなエロオヤジにバスター墜されたのかよ・・・。
クルーはみな脱走兵で、エロオヤジはエースパイロットで、
現地調達の学生志願兵にナチュラルと仲良しのコーディネイター・・・。
異常だ・・・有り得ない・・・侮れない艦だ・・・AA・・・!
こんな艦の捕虜なんてやってる場合かオレは・・・。
「ディアッカ・・・どうしたの顔色悪いよ?」
「人生について考えてんだよ・・・。はぁ〜もう訳わかんねえわ」
頭を抱え、オレはぼんやりとサイを見た。
「ゆっくり考えるといいよ。考えられる時間があるのって幸せな事だと俺は思うよ」
サイはしんみりと語った。
そうだよな・・・こいつらきっとそんな時間さえ無かったんだろうさ・・・。
でも・・・そのセリフ・・・エロ本片手に言うセリフじゃねぇよなあ・・。
「あ、ディアッカ!この本借りていくね?少佐には俺から返しておくよ」
サイが抱えているのはオレが見終えたエロ本・・・。
おまえも訳ワカンネ〜よ!サイ・アーガイル・・・!
訳の分からないことばかりで・・・訳が解らなくなっているディアッカであった。
(2004.12.1) 空
※ サイってこんな感じの大物だと思っています。
ディアッカとも仲良さそうですし・・・。
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