気が付けばその女はいつも窓から外を眺めていた。
彼方に広がる蒼い空と海を繋ぐ一点をただ黙って見つめている理由なんてまるでオレには解らない。

お世辞にも美人とは云えない女だが、何故か妙にオレを惹きつけるものがあった。
業務を終えて自室に戻ってくると、女は小さな声で「お帰りなさい」とオレに言う。
取るに足らぬナチュラルの、まだ16歳だというその女が何を考えているのか、ましてや敵であるコーディネイターの男(ってオレもまだ17歳)と同衾させられているその境遇をどう思っているのだろう。
その表情から窺い知る事は難しいし、第一そんなものに興味を持ったところで何がどうなる訳でもないのではあるが。





The Other Side of Love    リロード 「D」






「・・・どうした?」

オレの隣で眠っていた女が身じろぎをした。
どうやら悪夢を見る事が多いらしく、今日も寝付けないようだ。

「・・・あ。ごめんなさい。起こしてしまいましたか?」

女は消え入る様な声でオレに謝罪すると、身体の向きをくるりと変えた。

「眠れないのか・・・?」

いつもの事だが取り敢えず声を掛けてみる。

「大丈夫。夢を見ただけですから・・・」

お決まりの返事だが、大して気にも留めずにオレは「そう・・・」とだけ言葉を返した。
息を潜めピクリとも動かない女は、軍務のあるオレを気遣い、眠った振りをしてこのまま一夜を明かすつもりらしい。
だが、それは体力の無い病み上がりのこの女には酷だ。

「眠れないならこっちに来い」

女の背中から腕を廻して抱き寄せると、僅かに身体を堅くしてその首筋をオレに向けた。
雪の様に白いそれに口付けると、女の脈動が伝わって来てその都度オレをその気にさせる。

「もう大丈夫ですから・・・放して下さい」

こんな艶かしい状況で放す事など、当然オレがするはずもなく、「こっち向けよ・・・」と、力任せに強引に真正面を向かせて体重を乗せた。
元より全裸の女である。
キスを交わし、女の中に入り込むと、それきり女の抵抗は止んだ。
あとはもう、オレのされるがままに身を任せ意識を失なうまで続けられる営みにただ耐えるだけの玩具になる。








**********







───ミリアリア・ハウという名のその女がオレの所に来たのはひと月程前の事だ。

いけすかない仮面を着けた上司のクルーゼが地球軍本部、アラスカのJOSH−Aから攫ってきた女なのだが、本来捕虜の収容所に収監されるべき筈の身柄は何故かオレの監視下に置かれている。
上司曰く、「まだ年端も行かない少女だから、収容所なんかで慰み者にされるのは可哀そうだろう?」と言うが、
だからってオレに預けるのもどうかと思う。
「殺したり、自殺に追いやったりしなければ君の好きにしていいよ」だなんて結局はオレの慰み者にしていいって事じゃないか。
まったく何の為にこの女を攫ってきたのかホント意味解らねぇよ。バカじゃねえの?アイツ。
だけどさ?せっかくナチュラルの女とヤれるチャンスなんだしさ?ここはひとつありがたくお頂きさせてもらいましょってね。
そして、まだ気を失ったままの女をクルーゼの奴から受け取ったとき、正直オレは驚いた。

(うわ・・・軽い)

小柄なせいもあっただろうが、あまりの軽さに小動物を抱いている様な、そんな感覚だった。
部屋に戻ってからベッドに寝かせ、履いていたブーツと、軍服の襟元を緩めてやった。こんなカチカチの服じゃ色気もないしな。

(ずい分赤い顔してるな・・・)

女の顔を至近で見て初めて気が付いたのだが、額には汗まで浮かんでいる。
熱を測ると39度もある。オレはコーディネイターだから発熱の経験など殆どないが、呼吸の荒さからみても、ただ事ではなさそうだったので一応医療班員に診察させるとひと言「過労からくる発熱ですね」と、あっさり返事が返ってきた。ってことは休ませれば多分問題はないのだろう。
さっさと医療班員を追い出して、オレは汗にまみれた軍服を脱がせてやった。綺麗な肌をしていたその身体はまだ男と寝た経験などなさそうに思える。
とにかく華奢だ。だが、女の腹を見てオレは眉を顰めた。クルーゼの奴は余程強く腹を殴って昏倒させたと見えて大きな痣が残っていた。これって女相手に酷くないか?まあ、とにかく目覚めたらひと遊びさせてもらいましょ〜ね。ナチュラルの女の具合ってどんなモノだか興味津々てね!


しかし・・・オレが実際その女を抱いたのはそれから二週間も後の事だった。

余程疲れていたのか、女は暫くの間病床に臥していた。さすがに病人じゃ手を出す訳にもいかないし、一緒に寝るのも考えものだ。
なにしろこっちはもう手を出したくてうずうずしている。
ゆえにあまり女に近寄らないようにしていたのだが、なんだかそれは手の早いオレらしくもなくてひとり笑ってしまう。
なにしろ相手はナチュラルの女なのだ。回復も遅いから少しは気遣ってやんないとさ?可哀そうじゃない?
それに・・・この女、目覚めた直後こそオレに怯えはしたものの、どうやらコーディネイターに対する偏見は薄いように思われたし、元々が優しい気質と見えて、オレのベッドを占有している事を詫びてきたときは正直(かわいい・・・)とさえ思えた程だ。
病人には果物がいい。業務を終えると基地内の店でりんごやケーキを買い、部屋で女に食べさせてやったら・・・とても意外そうな顔をされた。
でも、手渡したものは全て微笑みながら受け取ってくれる。「ありがとうございます」なんてオレ、他の女から言われた事なんてなかったぜ?

だいぶ落ち着いてきて入浴の許可も下りた頃、オレは女に・・・その・・・。

「コーディネイターであるオレは嫌ではないのか・・・?」と尋ねてみたところ、『私はオーブの人間ですからコーディネイターの友人や仲間だっていましたよ』との返事にまた驚かされる。なるほど。あそこの国民なら確かにコーディネイターへの偏見も薄いかも知れない。
更に詳しく話しを聞けば、この女はヘリオポリス、そうオレらが派手にブッ壊したあのコロニーの出身。

おまけになんと・・・!!あの『足つき』のクルーだったというのだ。

当然ヘリオポリスから奪取したバスターの事もよく知っていた。つまり戦場でも敵同士だったという事である。

「じゃあ・・・オレの事は嫌い云々どころじゃないよな・・・もう憎くて憎くてしょうがない仇ってわけだ」

なんだか空しくなってしまって、ちょっと自嘲気味にそう言ったら女からこういう答えが返ってきた。

「・・・でも・・・あなたを憎むのはきっと何か違うと思います。あなたは自分の国を・・・プラントを護る為に戦ったんでしょう?ユニウスセブンに核を撃たれて同胞を殺されて!それをやったのは私たちナチュラルでしょう!」

「私達こそあなたの憎むべき仇じゃないですか・・・」

そのまま俯いてしまった女が何故だかとても哀れに思えて・・・気が付いたらオレは女を抱いてしまっていた。

もとより抱きたかった女だったから、オレの行動に歯止めなんかかからない。
頭の片隅に(やさしくしてやろう)なんて考えも浮かんだが、いつの間にやら行為に夢中になってそんな事も忘れてしまった。
思った通り男に抱かれた経験など殆どないような女だった。
声を必死で殺す仕草がたまらなくて何度も突き入れては声を出させようと試みた。
堪えきれずにすすり泣くような小さな甘い声はオレを刺激して止まない。
そのうちに疲れ果てた女が気を失なってからもオレはその身体を放せなかった。
朝が来るまでずっと・・・ずっと抱いていた。

きっと珍しかったのだろう。

なにしろナチュラルの女なんて初めて抱いたのだし、捕虜である以上オレの命令には逆らえないのだ。
まあ、最高のおもちゃを与えられたっていう訳で・・・いいんじゃないの?こういう生活。
女はまだ眠っているが、オレは軍務があるので名残惜しかったがシャワーを浴びて部屋を出た。

まだオレのバスターは修理が終わっていないので毎日がシュミレーション相手のつまらないものだ、

(あ〜あ!こんなシュミレーションよりもさあ・・・)

早く部屋に戻ってあの女の顔が見たい。
一夜を共にした男をどんな眼で見るのか楽しみだ。
嫌がって泣いているか、それとももっとソノ気になったか・・・女の反応が楽しみだ。

病み上がりの身体に無理をさせちまったから、またリンゴでも買って帰ろう。
大事なおもちゃなんだからさ?壊さないようにしないとねえ?




───パシュウウ




と、ドアを開けて部屋に戻ってみると、女は灯りも点けずに黙って窓から海を眺めていた。

そういえば、この女の瞳は南海のオーブと同じくすんだ蒼だった事を思い出した。
オレを正面から見る事などしない女だったからつい失念していたが、綺麗な蒼い瞳をしていたっけな・・・。

「おかえりなさい・・・」

小さな・・・今にも消え入りそうなか細い声にオレの理性は呆れるほど見事に吹っ飛んでしまった。

女の腕を掴み正面を向かせる。そのまま壁に押し付けてオレはゆっくりと・・・いや、残忍に笑った。

「なあ・・・オレの顔を見ろよ。どう?一緒に寝た男だぜ?もう他人様じゃないってねえ・・・」

「・・・・・・」

女は何も答えないし、おまけに顔まで伏せたその仕草にオレはちょっとムカついた。

「ま、他人様じゃなくなったんだからさ?もっと親睦を深めようぜ・・・!」

そう言ってオレは女を抱き上げると乱暴にベッドの上にその身体を投げ出した。

そう・・・この女はオレの・・・オレだけの慰み者だ。
だからオレを見ろよ。
その蒼い瞳でオレを見ろよ・・・。

全身ムダの無いコーディネイターの女にはない・・・脂肪のついた柔らかな身体は抱いていて本当に気持ちがいい。

なあ・・・おまえはオレの捕虜なんだぜ?
おまえの生殺与奪権はオレが握っているんだぜ?

だからもっと愛想よくしろよ。
ほら・・・気持ちいいだろう?
もっとイカせてやるから・・・。






───だから・・・その蒼い瞳でオレだけを見ろよ・・・。













 (2006.2.17) 空

 ※   う〜ん・・・今日はミリィの誕生日なんですがもっと甘いお話を先に描くべきだったでしょうかね(笑)
      段々公式設定の狡猾で残忍なディアッカになってきました。
      でもまだまだですよ!パラノイアディアッカまで到達してはいませんよ・・・そうよ私は黒好み♪

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