雨に紛れて・・・ special ! 『 D 』の主張
昨日から降り続く雨はまだやみそうも無い。
ずぶ濡れになったこととオレとの過度の情事(結局あれからオレはずっとミリアリアを抱いていた)で彼女は熱を出した。
無理をさせたことは悪いと思いつつも、それ以上に彼女を離すことがオレには出来なかった。
残された時間があまりにも短すぎて当然焦りがあった。
彼女がオレを忘れないように。
ひとりで眠る夜が寂しくてオレを思い出しては恋しがるように。
何度も何度もキスをして、抱いて、包み込んだ。
男の愛情の示し方は『抱く』という行為に終始する。
傍に居てそっと見守るなんて芸当は綺麗事なのだと痛感してしまう。
好きなら自分のものにしてしまわないと気がすまない。
ただ・・・そこに到るまでの距離と時間が人によって違うのだ。
世間ではそれを『理性』とか『自制心』という呼び方をしているに過ぎない。
ミリアリアを抱いて自分のものにしたはずなのに、身体を離した直後からもう欲しくてたまらなくなる。
少しでも離れると不安に押しつぶされそうになる。はたしてこんな気持ちが彼女には理解出来るだろうか・・・?
ホテルから毛布を譲ってもらい、それにミリアリアの身体を包んだ。
熱のある身体にエレカでの移動は辛いとは思うが、AAに帰艦しないわけにはいかない。
昨夜ノイマンさんについた嘘が本当になってしまったことに苦笑する。
「帰るよ・・・」そう言ってオレはエレカを発進させた。
「ミリィ!・・・大丈夫?」
AAではキラが心配顔で出迎える。すぐ横にノイマン操縦士の姿も見えた。
「おかえりふたりとも。ハウは大丈夫かい?それとエルスマン・・・君にお客さんが来ているよ。ザフトの銀髪の友人」
「イザークが?」
「ああ・・・会議室で待って頂いているから、ハウの処置が済んだら行ってほしい」
「分りました。ありがとうございます」
イザークが何の用かと気になったが、まずはミリアリアに処置を施す。
医務室ではなくて、当然のようにオレの部屋のベッドにミリアリアを寝かしつけた。
点滴と解熱剤を処方して、水枕の用意を済ませるとドアホンが鳴った。
「ディアッカ・・・僕だけど」
「ああキラか?ラッキー!ちょっと入って来てくれない?」
「イザークが来ているんでしょう?ミリィは僕が看ているから早く行ってあげた方がいいよ」
「さすがはキラだな〜!オレの言いたい事が良く解っているんじゃない?そうなんだ。ミリアリアを頼むよ」
「うん・・・大丈夫だよ。あ、点滴・・・次はこれでいいの?」
「ああその黄色いやつが終わったらピンクのに替えてもらっていいか?」
キラは頷くと、早く行けとばかりにオレを促した。ま、宜しくお願いしちゃいましょう。
───ディアッカが出て行った。
「ミリィ・・・起きてる?」
「キラ・・・心配掛けてごめんね・・・」
キラは心配そうにミリアリアを見て・・・・(おやおや・・・)と小さく呟いた。
「なあに・・・?キラ?私がどうかした?」
怪訝そうにミリアリアが尋ねるのを受けてキラはベッドの横にあった鏡を差し出した。
なんで鏡なんか・・・と思いつつも自分の姿を映してみると・・・。
「・・・・・・・・・・!!!!!」 その姿に絶句する。
鏡に映る自分の姿・・・その首筋に残るのは無数のキスマーク・・・!
(ディアッカのバカっ・・・!)
いつの間に彼がこんな跡をつけたのかミリアリアには全く記憶が無い。
自分が眠っている間なのだろうけれど・・・まさかとは思うがこのキスマークって他の場所にも・・・・?
そう思うとミリアリアは自分の熱が一挙に上がっていくような気がした。
「キラ・・・」
すがる様な瞳でミリアリアはキラを凝視する。
「ミリィは納得してるんでしょう?ディアッカはミリィの嫌がることなんてしないから」
キラはそう言って柔和な笑みを見せた。
「ところで・・・ディアッカとはこれからの事について話合ったの?もう出発まで一週間もないけれど・・・」
「ううん・・・具体的なことはまだ何も・・・」 ミリアリアはちょっと不安になった。
なにしろディアッカは『プラントに戻る』とミリアリアに告げただけなのだ。冷静になって考えてみると。
雨に濡れたのを幸いにホテルに連れ込まれ(?)後は彼のペースでコトが進んでしまった。
オレを忘れないで・・・と何度も繰り返された挙句、何度も抱かれて熱までだして。
(私・・・これからどうなるの・・・・?)ミリアリアじゃなくても不安になるに違いない。ホント、とんでもないオトコだ。
そんなミリアリアの様子を見ていたキラは、ディアッカがミリアリアを構いたくなる気持ちが解る気がした。
(可愛いね・・・ミリィは)
いつかディアッカは言っていたではないか。『ミリアリアは見ているとおもしろい』と。
「ザフトからイザークが来ているんだけど、今きっとその話もしているんじゃないのかな・・・」
「・・・?」
「イザークはディアッカにも用があったんだろうけれど・・・どうだろう?
僕はどっちかというとミリィに会いに来たんじゃないかって思うよ・・・」
「イザークさんが私に?」
ミリアリアは不思議に思った。何故なら今まで殆ど話しをしたことなど無かったのだ。
「とにかくキチンと今後の話はしておいた方がいいよ。まあ、ディアッカもそのあたりは考えているんだろうけれど」
「・・・そうよね・・・あいつの考えてることなんて私の理解の域を超えていると思うもの・・・」
「でも信用はしているんでしょう?」
「ウソは吐かないと思うわ・・・ホラは吹くけれど!」
「違いないね・・・!」
キラとミリアリアは互いに笑い合った。
「キラ!サンキューな!」
「ディアッカ話は終わったの?」
「ああ・・・今からイザークの奴がここに来るんだ・・・ミリアリアに話があるんだとさ!」
「じゃあ・・・僕は席を外すよね・・・」そう言ってキラは立ち上がった。
「ああ悪い!後で何か奢るわオレ!」
「大丈夫だよ・・・それより・・・」
キラはディアッカとすれ違いざまに・・・(ミリィ・・・相当怒っているからキミ、覚悟した方がいいよ・・・)と囁く。
「・・・・・・?」きょとんとするディアッカに笑いかけてキラは部屋を出て行った。
「ねえ・・・ディアッカ・・・これ一体どういうことよ!」
ミリアリアは首筋のキスマークをディアッカに見せた。
「え〜・・・それはオレがつけたキスマークですが?何かご不満でも?」
ディアッカは口元を曲げてクククと笑っている。なるほど。キラが言ったのはこの事らしい。
「なんでこんな見えるところにつけるのよっ!これじゃAAのみんなにバレバレじゃない!」
「だって見える様につけたんだもん♪おまえがオレのものだと解るようにさあ〜!」
「あ・・・あんたってもうサイテーな奴よねっ!」真っ赤な顔で怒るとても可愛いミリアリアに。
「そんじゃサイテーついでに服のボタン外してみな?」 と、益々笑いが込み上げてくるディアッカである。
ミリアリアが恐る恐るボタンを外して覗き込むと・・・・・・・
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」
それこそ無数の紅い跡がついていた・・・っていうか、肌の白さよりもキスマーク紅い跡の方が多いのではと思うくらいに。
「いかがですか?・・・つ〜かそんだけつけられても起きないおまえがどうかしてるって!」
「ああもうあんたってありえない位サイテーよっ!これじゃラクスさんやカガリとお風呂に入れないでしょっ!」
「何で?残りの六日はオレと一緒にここで過ごすに決まってるじゃない?オレと一緒に入ば問題ないでしょ?」
そう言ってディアッカは凄まじい程色っぽい顔をしてミリアリアにウインクをしたのだった・・・・・・。
───ディアッカは雨に紛れてミリアリアの心の隙間から中へそっと忍び込むと・・・激流と化して全てを押し流した。
彼女の頑なな心を砕いて真実の気持ちを曝け出させたあと、自らの想いで彼女を包み込み、覆い尽した。
それはもうこれ以上無い位狡猾(?)なやり方だったかもしれないが、結果が良ければ全て良しということだろうか。
ま、このふたりは結果どころか、これから全てが始まるわけだし、はたして未来はどうなることやら予定は未定ということで・・・。
(2005.7.12) 空
※ 『 D 』バージョンのラストなのですみません!もう1回だけ続きます!
当然次は 『 M 』でラストを飾らせて頂きます!
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