───プラントに戻るよ・・・・・・。






朝から降り続く雨の日に、それは何の前触れもなく、本当に唐突に彼から告げられた言葉だった。

停戦後、長く処遇の決まらなかった彼だが、形式だけの軍事裁判で無罪がほぼ確定し、
逆に帰国の要請があったのだとも話してくれた。






「そう。良かったじゃない?2ヶ月以上もオーブでくすぶっていたんだから」

「それだけ・・・?」

「当たり前よ! 他に何があるっていうのよ?」

「オレがいなくなって寂しいとか思ってくれないの?」

「アンタ自惚れ強すぎるんじゃないの?ところで他に用事が無いなら・・・私先にAAに戻るわね!」






そう言い残して彼の元から走り出す。

そんな強い雨じゃない。

彼の姿が見えなくなった曲がり角で静かに息を整える。

だって、ずっと思っていた。
生き残れたら彼をプラントに帰してあげたかった。
生きていることを家族や仲間に伝えてあげたかった。

コーディネイターの住む遠いプラントは私の知らない彼の世界だ。
AAではセーブしていたであろう能力だって、思い切りオープンに出来る。
人工の世界でも、彼にとっては一番自然に過ごせる場所だ。

端整な容姿で、能力だって映え抜きの彼が私を「好き」だと云ってくれた。

でもそれは・・・あの異常に捻じ曲げられたAAでの暮らしが生み出した妄想で、彼はそう思いこんでいるだけだ。

大丈夫。プラントに戻って再び彼の世界が動き出したら、夢から覚めて現実に戻っていくだろう。









夢は見ない方がいいし、希望だって持ちたくない。

もう、誰かにおいて行かれるのはきっと耐えられないと、私はちゃんと解っている。

おいて行かれるだけの想いなんていらない。

大丈夫。私はきっと頑張れる。

世界が再び動き出せば生きるための努力もしよう。

大丈夫。私はきっと頑張れる。

大丈夫。私はきっと頑張れるから!想い出だって忘れるから・・・!









───だからお願い・・・今だけでいいから降り続く雨に紛れて私の涙も雨へと還して・・・・・・。














 (2005.6.19) 空

※  さて・・・この後ディアッカさんはどうしたでしょうか・・・?


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雨に紛れて・・・