「オハヨ〜ミリアリア」
ああこのオトコ本当にうざったい!
監獄ノスタルジア(5)
アラスカを逃れたAAが向かったのはオーブ本国。
言葉に尽せないほどいろいろな事があった。
何はともあれ生きている喜びは格別のものだ。
ウズミ代表の心尽くしで、私達もようやく落ち着くことができた。
・・・・・だが、ここにきてトンデモナイ問題が浮上したのだ!
コイツだコイツ!
ディアッカ=エルスマン。ザフトの捕虜だ。
「ね〜ミリアリア朝ごはんな〜に? ここで一緒に食べない〜?」
「食べません!」
「だってヒマなんでしょ?オレと監獄デートしてみない?」
「イ・ヤ!そんなヒマありません!」
・・・・・・毎日これだ。
本当ならアラスカで捕虜返還の手続きが取られるはずだったのに、あんなことになったが為に今もAAに捕らえられたままだ。
AAの存在を公表出来ないので、このまま拘置されている・・・というわけなのだ。
ああ!ほっとかれて可哀そうなんて思うんじゃなかった。
お腹すかしてるかな・・・とか寂しいんじゃないか!とか、プラントに帰りたいんだろうな!とか思うんじゃなかった。
コイツはどこでだって生きて行ける!絶っ体生きて行ける!アタシは確信した!
いつの間にかコイツの世話はアタシの仕事になっていた。
「アイツお嬢ちゃんじゃないとイイ顔しないんだよぉ。確かにアイツの処遇も気の毒だしさぁ・・・少し慰めてやってくれよ」
「そんなこと言われても・・・それに私の身に危険が及ぶとか考えてくれたりってしないんですかぁ?」
「いや、それは大丈夫だと思う」
「そんなぁ・・・!」
あまりにもお気楽すぎる。相手はコーディネイターで、しかもエリートだという話。
「・・・いやなぁアイツ、お嬢ちゃんの事になると、すごく嬉しそうな顔をするんだよ」
「 ・・・・・・・・ 」
「フラガ少佐もその方がいいって言うしなぁ〜」
「う・・・」
言葉に詰まる。
AAのなかでも、アタシが出来る事なんて限られているのだ。
もともとクルーの少ないAA・・・他のクルーの仕事は多い。迷惑はかけられない。
「じゃ・・・頼むからな!」
・・・・・・そそくさと行かれてしまった。
別にコイツが嫌いだとか、怖いとかいうわけじゃない。
アタシが・・・ナイフで傷つけた相手だから・・・。
その件でコイツがアタシを責めたりする事はなかったけれど。
「気にしなくていい」と言ってくれたけれど。あの信じられない程綺麗な顔に傷を付けて、赤い血もたくさん流れて・・・。
コーディネイターもナチュラルと同じ人間なのだと思い知らされた。
コイツを見ていると人間の醜さを見せ付けられる様な気がして、悲しくなるのだ。
「ミリアリア・・・どうかしたの?」
「あ・・・」
「もしかしておれに見惚れてた?」
またコイツはにやけた眼つきで私を見ている。
「バカな事言わないで!」
コイツのこの軽いノリっお願いもうなんとかしてよっ!
「あ〜・・・!この鉄格子ホント邪魔だよな!超える事の出来ない二人の愛の障害物ってカンジ・・・?」
「愛なんてどこにもないわよ!ほんっとにバカじゃないのアンタって!」
「これから築いていけばいいじゃない? これでもオレって生活能力高いしさあ」
「おことわり・・・!」
「も〜つれないんだからぁ・・・ミリアリアはぁ」
つれなくて結構ですよ〜だ!
「この鉄格子が邪魔なら、開けてみなさいよ!アンタ、コーディネイターなんでしょ?出来るかもよ」
あまりにもうるさいものだから・・・ちょっと冗談のつもりで言ってみた。
すると 「そう?じゃぁちょっと待ってて」
そう言ってコイツはロックコンソールBOXキーを叩き始めた。
───----・PIPOPAPO・・・・・・PPPP!
「・・・え・・・ちょっと・・・?」
───カシャ・・・ン。キイイイ・・・(って・・・なに・・・?この音)
「開いたよ〜ミリアリア!ほら!」
(うそ・・・!!なんで・・・!)
ロックは簡単に解除されてしまっていた。
「二人の愛の障害物も取り除けたし、ミリアリア、愛の語らい始めない?」
何食わぬ顔をしてコイツは手をヒラヒラさせている。
「何驚いてるの〜オレにとっては朝飯前だって〜の!」
───腰が抜けた・・・。コイツとんでもないオトコだ。
・・・と、いうことは・・・。
「アンタなんで逃げ出そうとしなかったの?いつでも逃げられたんじゃないの!」
そうだ・・・逃げる事など簡単にできたはずだ。ロック解除の緊急アラートも鳴ってない。
よほど、精巧に解除したに違いないわ!
「ディアッカって呼んでくれる?」
そう言ってコイツはいきなりアタシの腰を引き寄せた。
そのうえあろうことか手のひらに小さく『キス・・・!』までされた!
「逃げたりしたら、ミリアリアがオレを脱獄させたって疑われるじゃない? これじゃさぁ〜」
う・・言われてみれば確かにそうだ。コイツをシャワーに連れて行く以外、ここには誰も来ないのだ。
と、いう事はアタシが疑われるのは当然のことじゃないの!
「それはちょっと可哀そうデショ?オレって優しいし。..そうそうこれバレるとマズイよねえ♪
ミリアリアの責任にされちゃうよね?オレのコトそそのかしたのもみんなミリアリアだもんね〜」
コイツはおもしろくてショウガナイって顔をしている。
「・・・何が言いたいのよ・・・」
アタシは事の重大さに震えが止まらない。
「どう?オレと取引しない?」
口元を歪めて嬉しそうにコイツは囁く。
「取引きって・・・?」・・・思わず息を詰める。
「ん〜簡単♪まずオレの事は、ディアッカって呼んでくれる?それでもって3度の食事もミリアリアが運んでね。
でもって、こうやってここでデートしてくれればOK!そうすればここにいてあげるけど?どう?悪くないでショ?」
・・・・ 思えば気が動転していたのだ・・・。
ただただ頷くだけの自分・・・。
「は〜い じゃ約束!」 そう言って今度は頬にキスされた!
「じゃ、明日からヨロシクね〜!待ってるからね〜!ミ・リ・ア・リ・ア」
頬を寄せ耳元で囁かれる・・・ああ悪魔の囁きとはこの事だ。
アタシはもう急いで拘禁室から逃げ出した。
そして明日からのことを思うと・・・目の前が真っ暗になった。