へえ・・・けっこう広いんだ。
監獄ノスタルジア(2)
パイロットスーツを脱がされ、アンダー姿で連行される。
足つきは新造戦艦だけあって、明るく柔らかい色調で統一されていた。
「ほら!とっとと歩け!」
銃で強く押さえつけられる。
「こっちはケガ人だってーの」
まったくいつまでほっとくつもりだったんだか・・・。
通路を歩いて行くうちに、何時の間にかあちこちで人だかりが出来ていた。
物珍しげな視線に侮蔑の言葉!ほんとやんなっちまうぜ!
ま、そのうちたっぷり激烈に仕返ししてやるからな!
・・・・?・・・・しばらくして妙なことに気がついた。
この艦には女っていないのか・・・?
まだ、女の姿は一度も見ていない。
普通、後方支援や管制オペレーターには欠かせないはずだ。
艦橋に詰めているにしても、1人や2人見かけてもいいのではないのか。
つまんね〜艦だなぁ!ナチュラルのカワイコちゃんいね〜のかよ・・・。
オンナがいないなんて、オレにとっちゃ生き地獄だわ・・・パスだパス!
だが、前方の人だかりから、小さい栗色の頭が覗いているのが見えた。
近づくにつれ、輪郭がはっきり見えてくる。
「へえ・・・この艦ってこんなオンナノコも乗ってんの〜」
実際可愛い子だった。ナチュラルにしてはなかなかのレベルだ。
栗色の跳ねた髪、大きな瞳はオーブの碧がかったやわらかい海の色。
でも・・・その瞳に浮かべているのは大粒の涙ばかり。
なんだよ・・・そんなに俺の事が恐ろしいのかよ・・・。
そう思ったら妙にムカついて、次の瞬間口から出た言葉は・・・。
「バッカみてぇ〜!な〜に泣いてんだよ!泣きたいのはコッチだっつ〜の!」
オンナは俺の言葉に身体をビクつかせ、瞳をそらせた。
隣にいたメガネの野郎がオレに殴りかかろうと拳をあげる。
捕虜への虐待は禁止されている。周囲に止められ、悔しそうそうだ。
(ふふん・・)可笑しくて鼻で笑ってやった。
(2004・10・26) 空
・・・・・そして睡魔が襲ってくる・・・。
遠ざかる意識の中、通路で見かけた女の蒼い瞳を思い出す。
(大きな蒼い瞳だったよな・・・)
そんなことを思いながら急速に意識は・・・。
遠ざかって・・・。
消えた・・・。
よく見ておこう・・・。
ここからトンズラするにしてもザフトに戻されるにしても
足つきの情報は有効に活用されるはずだ。
これから暫くの間は不自由だろうがま、それはそれだ。
「ここで待っていろ!」
そういい残して皆いなくなる。
おいおい随分ノンキだぜ・・・。
ま、流石にオレも疲れたから少し休ませてもらおっかな〜!