なるほど。よくいったものである。
『恋の炎が燃え上がる』という表現。
なぜなら物理学的には燃え上がる炎の熱には上限などないのだから。






熱をもつ氷  ・・・すべてが転がり堕ちてゆく───






───ここはアラスカ。地球連合軍本部所在地JOSH−Aである。

先のマーシャル諸島での激戦を乗り越え、AAはここJOSH−Aでアラスカ守備軍としての任務に就いていた。
AA艦内では人事異動の命令があり、フラガとフレイがそれぞれの就任先に向かって艦を降りていった。


(行ってしまった・・・)

ミリアリアはひとりタラップを眺めながらこれまでAAで過ごしてきた日々を思い浮かべた。

トールとキラはMIAになった。
そして今、フレイとフラガ少佐を見送ったのだ。こうして見知ったひとがいなくなっていくのは心底辛い。

(あれ?)

タラップに何やら光るものが見えた。
不審に思ったミリアリアはタラップまで降りてそれを拾い上げてみるとそれはロケットペンダントだった。

(これ・・・フラガ少佐の?)

銀の蓋のついたこのロケットには見覚えがあった。裏を返せば『F』と彫ってある。間違いなくフラガのものだ。

(大変!早く届けなくっちゃ!)

まだフラガ少佐はグランドホローのプラットホームにいるだろうと思いミリアリアは慌てて駆け出した。

「どこへ行くんだ!ハウ!」

呼び止めるチャンドラに事情を説明してミリアリアはAAを後にした。
まさかあんなことになるなんて思いもせずに・・・。







**********






グランドホローの地下ドックは想像より遥かに複雑で、ミリアリアは数分と経たず中で迷ってしまった。

(ここ・・・どこなんだろう・・・)

当ても無くただ内部をウロウロしていると、通路の先で何やら声がするではないか。

(・・・あ)

渡りに船とばかりにミリアリアは声のする方へ駆け寄ろうとしたのだがその時!
突然通路を曲がってきた人影を見て思わず声をあげそうになった。

(ザフト兵・・・!)

いきなり銃撃戦になり、抵抗していた地球軍兵士が打たれて死んだ。

(・・・!)

唐突に起きた出来事にミリアリアの頭はパニック寸前になりフラフラとその場に座り込んでしまった。

「おやおや・・・これはこれは・・・」

冷たい笑いと共に姿を現したのは奇妙な仮面をつけた男だ。ミリアリアの姿を視界に捉えそっと近づく。

(ひ・・・・・っ)声にならない声がミリアリアから漏れた。
ザフトの男の拳がミリアリアの鳩尾を突き上げると、彼女はそのまま崩れ落ちる。

少しの間、仮面の男はミリアリアを見下ろしていたのだが、やがておもむろににミリアリアを抱きかかえると、急ぎ足でその場を離れていった






**********






───アラスカ沖に停泊中のザフト潜水母艦クストースト。

先程JOSH−Aから帰艦した仮面の男がミリアリアを抱いてこのクストーストの私室に戻っていた。
かなり強く鳩尾に拳を入れられたとみえて、まだミリアリアは目覚めない。
クストーストの外ではザフト全軍がJOSH−Aに総攻撃をかけている。

「ふむ・・・」

仮面の男は気を失っているミリアリアの頬に触れると思案気に首を傾げた。

「誰にあてがうべきかな・・・」

笑いながら自分の隊に所属する隊員たちの姿を思い浮かべる。そして程なくひとりの少年を挙げた。

「そうだ・・・こいつがいい」

仮面の男は立ち上がると艦橋に、『ディアッカ・エルスマン』の所在を確かめさせる。
聞けばMSを中破させ、クストーストに戻って来ているという返事に『ではディアッカにクルーゼが呼んでいると伝えてくれ』と申し入れると手早く通信機を置いた。


**********


「クルーゼ隊長!ディアッカ・エルスマンご命令により参りました!」

プシュッという音と共にディアッカと名乗った少年が室内に入ると、彼はまず眼に映った小柄な少女の姿に驚きを隠せない。だが、それには触れずに淡々と仮面の男に話しかける。

「クルーゼ隊長、お呼びでしょうか?」

ディアッカは不思議な面持ちで仮面を着けた男と少女を見比べている。

「ああ、ディアッカ。バスターが中破したそうだが怪我はなかったかね?」

クルーゼ隊長と呼ばれた仮面の男が口元に薄笑いを浮かべながらディアッカに尋ねるが、ディアッカのほうは形式的に返事をするに留めている。
何のことは無い、ディアッカはこの上官。仮面を着けたラウ・ル・クルーゼ隊長が大の苦手なのだ。だかそんなディアッカの態度を気にするふうも無くクルーゼは言葉を続ける。

「まあいい。ディアッカ。君に頼みがあってここに来てもらったのだがね?」

仮面の中の表情までは読み取れない不気味な上官にディアッカは即座に警戒心を抱く。

「実はこの女の子・・・アラスカのJOSH−Aから連れてきたのだが、見ての通りまだ年端もいかぬ少女だろう?ひ弱なナチュラルの女の子だから捕虜の収容施設に入れるのは忍びないのだよ。で、すまないのだが、君にこの子の面倒を看てもらいたいと思ってね・・・」

「面倒・・・ですか?」きつねに抓まれたようなディアッカの返事にクルーゼもまた言葉を返した。

「そうだ。こんな女の子が捕虜の収容施設に送られたらどうなるか君にも解るだろう?」

「・・・・・・なるほど」

ディアッカは一瞬下卑た笑いを浮かべたがすぐにその色を消した。

「つまり不特定多数の慰み者にされるのは可哀そうだと・・・?」

「・・・そういうことだ。君が世話をしているという少女なら誰も近寄ってはこないだろうからな」

「いい人選をなさいますね?隊長?」

口の端をクククと歪めてディアッカはミリアリアを見つめた。

「でも・・・私に面倒を看させるということはやはり同様に今度は私の慰み者にされないのかと・・・隊長はお考えにはなりませんか?」

そう言って探るような眼つきでディアッカは上官を眺めやる。

「君なら女の子を悦ばせることは出来ても、苛めることはしないだろう?噂は私の耳にまで届いているよ?ディアッカ」

ディアッカの質問の裏を読み取ってクルーゼはなおも意味深な言葉を返した。

「まあ、君の好きにしていいが、但し殺したり自殺に追い込んだりはしないで欲しい。私の責任問題になるからね?」

「かしこまりました。ご命令慎んで拝命いたします」

敬礼の後、ディアッカは踵を返してそのままクルーゼの部屋から出て行こうとしたが、

「ああ・・・もうそろそろこの子も気が付くだろうから、このまま連れて行ってくれるとありがたいね」

そんなクルーゼの言葉に導かれるようにディアッカはミリアリアの身体をそっと抱き上げた。

(・・・うわ・・・軽い・・・)

そのままミリアリア胸に抱きかかえてディアッカはクルーゼの部屋を辞した。







───コツ・・・ン・・・。

ひと気の無い薄暗い通路を歩きながらディアッカはこれから起きるであろう出来事に思いを馳せる。

(最高のお楽しみだね・・・ホント)

腕の中にある少女の体温が心地よい。
よくよく見ると可愛い顔をしている。
コーディネイターの華やかな美しさこそないものの可憐な寝姿はディアッカの気をそそるに充分なものがあった。






(あはは・・・)





ディアッカはひとり悦に浸る・・・・・・。










                                                                       (つづく)


 (2005.10.24 ) 空

 ※ たいへんお待たせ致しました。リクエストの
    『もしも、フレイではなくミリィが捕虜になったらのディアミリSS(黒ディアッカで)』をお届けします。
    こちらの勝手な妄想で『15禁扱い』とさせて頂きました。当初の予定では『18禁』だったのですがそれはパス。
    リクエスト内容にそぐわないと判断してオープンにできる話に作り直しました旨をご了承下さいませ。
    少し長くなりそうなので、1度ここで切りますが、近日中にUPできる見通しですので続編をお待ち下さいw


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