6: 花 ※ 「藤」を先にご覧ください。
AAの食堂で、休憩中の3名サマが何やら真剣(?)に井戸端会議の真っ最中。
え?3名サマって誰なのかって?
まずはミリアリア。その前にいるのはサイで、もう1人は・・・これはちょっと以外な人物。
アーノルド=ノイマン・・・ご存知AAの操縦士。
士官食堂には誰もいなくてつまらないからとミリアリア達の傍に来たのだ。
「ノイマンさんは・・・木蓮なんてどうですか?」
「それはいいんじゃないのミリィ!ノイマンさんのイメージにピッタリだよね・・・」
「サイは・・・そうねぇ水仙なんかいいんじゃない?」
「え〜オレそんなナルシストじゃないよ!」
───楽しそうじゃない?何の話?
やって来たのは整備作業服を着たままのディアッカ。
「やあディアッカ。今から休憩?」
サイが同席を促すと、ディアッカはミリアリアの額にキスをして、その隣に座った。
「あ〜もう!マードックのおっさん人使い荒いよホント!やっと飯だもんな」
「どうせなら1日中作業していれば?ご飯抜きでダイエットできるわよ!」
「オレはダイエットなんて必要ないの!見てよこのムダのないカラダ!」
「ムダなのはあんたのその減らず口よ!」
ついついディアッカにはキツくなってしまうミリアリアの口調に。
「素直じゃないからねぇ〜ミリアリアは・・・」
・・・と、ディアッカはヘタレ顔で降参のポーズ。
「ところで・・・何の話してたのさ?水仙がどうのって聞こえたけど?」
「ああ・・・それ、花に例えたイメージ遊びだよ。俺が水仙で、ノイマンさんは木蓮ってな具合にね」
それを聞いたディアッカは。
「じゃあ・・・オレって例えると何の花になりそう?」
と、ニヤけた顔で興味津々。
「桜なんていいんじゃない?」これはサイの言葉。
「あんたなんてウツボカヅラとか、ハエトリソウなんかがピッタリよ!」
「・・・て、ミリアリア。それは食虫植物で花ではないと思うけれど・・・」ディアッカは溜息を吐く。
「そうだな・・・エルスマンは・・・藤なんてどうだ?」
それまで黙っていたノイマンがぽつりと語った。
「藤・・・って枝垂れ咲く木の花ですか?」
「ああ・・・アーガイルは見たことあるかい?俺は薄紫の花が好きだね」
「藤ねえ・・・そういえば前にも誰かに同じ事言われたなあ・・・」
アカデミー時代に言われた言葉。誰が言ったかなんてもう憶えてはいないけれど。
ディアッカは懐かしそうに瞳を伏せた。
「ところで・・・ミリアリアは何の花になったの?」
「あ・・・ミリィはまだだったね・・・そうだなあ〜・・・」
そんなサイの言葉を遮ってディアッカの問題発言。
「ミリアリアは藤棚!」
「ちょっと待ってよっ!何よそれ!それこそ花なんかじゃないじゃない!」
「オレが今決めた。オマエは藤棚!オレと一緒でワンセットな!」
「勝手に決めないでよ!あんた横暴!」
ここから先はいつもの痴話ゲンカに突入するも、ノイマンはそんな2人を見ながら考える。
藤の花は荘厳で美しいが育生は難しい花だ。
まず、藤の蔓を伸ばせないと花は咲かないし、成長も出来ない。
天然の藤は近くにある樹木に寄生して蔓を伸ばすのだが、共倒れにもなりかねない。
そこで・・・大抵の場合、蔓を伸ばすための藤棚が必要になってくる。
ディアッカは荘厳で美しく観る者を魅了せずにはおかない藤の花だ。
しかし・・・その花も藤棚の支え無くしては咲かせることは出来ない。
ミリアリアはそんなディアッカを支える藤棚。
藤の花を咲かせて、その身に花を纏うのだ。
ディアッカという花を纏うその姿は清廉でとても美しい。
藤と藤棚・・・互いの存在無くして成り立たないもの。
そして・・・藤棚に枝垂れ咲く藤花は、人々に安らぎをもたらして、束の間でも心を潤してくれる。
雨が降れば、その下で雨宿りも出来るし、木陰は休息の場所を与えてくれる。
サイはそんな2人を見つめて優しく笑う。
ノイマンも・・・「わが意を得たり」とサイを見る。
それに・・・なにもミリアリアを花に例える必要は無い。
ディアッカにとってミリアリアはその存在自体が花のようなものなのだから。