クサナギの格納庫にて

※ フライリグラード:番外編 その1



ストライク・ルージュのOS解析やプログラム作成も順調に進み、残るは明日からの微調整だけになった。
ルージュ自体はまだ組み上がるまでに時間が必要だが、プログラム作成が済めば操縦訓練には取りかかれる。
カガリの身体能力はナチュラルの女性としては極めて高く、ディアッカはキラとふたりで何度も綿密な計算をしてはプログラムを施した。
ようやく時間が取れるようになったディアッカはキラとムウの訪問を受けて3人で談笑に耽っていた。

「しかし・・・あの姫さんたいしたもんだなあ・・・」

ムウはしきりに感心する。MAやMSは高度な反射神経と判断能力を問われる最たるものだというのにカガリの適性はナチュラルとしては申し分のないものであった。さすが趣味は『体力づくり』だと公言するお姫さまだ。

「これがアスランに知れたら大変だよなあ・・・。きっと必死で止めるだろうけどさあ・・・一歩間違うと大喧嘩になりそうじゃないの?」

ディアッカの考えに他のふたりは笑って頷くも、カガリの性格を考えれば結局折れるのはアスランだろう。
パイロットはこの際多いほうがいいに決まっているのだから。

「まあそれはカガリ自身の問題だから、その時が来れば自分でなんとかするよ」

「そうだな」

「でもさ、ディアッカだったらどうするの?」

「・・・どうするのって何が・・・?」

キラの問いかけにディアッカは困惑する。

「もし、ミリィがMSに乗るなんて言ったらさ。ミリィは頑固だから言い出したらきっと聞かないよ?」

ディアッカは呆れ顔で笑う。

「乗るって言ったってあいつには無理だよ。適性以前に体力がないからな・・・」

「それでも乗るのがミリィじゃないの?ディアッカもそれは解ってるんでしょう?」

横ではムウがふたりのやりとりを無言のままニヤニヤしながら聞いている。

「じゃあ・・・好きに乗ればいいんじゃないの?そこまでオレが口出しする必要はないでしょ?」

「乗るな!って止めないの?」

「オレが言わなくても周りが止めるでしょ?それで即問題解決じゃない」

キラは優しく微笑むとディアッカに向かって言い放つ。

「僕が聞いているのは君の意見なんだけれどね。ディアッカ」

(・・・・・・!)

ディアッカの顔がかっとなるもののすぐにその色を押し隠した。




「じゃあさ?キラ、おまえだったらどうするのさ?」

ディアッカは逆襲とばかりにキラに畳みかける。

「もしもラクスがMSに乗りたいなんて言い出したら彼女こそ絶対引き下がらないんじゃないの?」

そんなディアッカの言葉にキラは・・・。

「だめだよ!ラクスは指揮官なんだから!MSに乗るなんて論外じゃない?」

「そうか?」

「そうだよ!それに周りも黙っていないよ?ラクスには無理だよ!」

「オレが聞いているのはおまえの意見なんだけれどねえ〜!キ〜ラ?」

今度はキラが押し黙ってしまった・・・。




───おまえら青春しちゃってるんじゃないの?

ムウが笑いながらふたりに話かける。

「やっぱりそうだよねえ。好きな女の子にはさ?危険なまねなんてして欲しくないよねえ!」

「そんなんじゃね〜よ!ただ、ミリアリアには無理だって言いたいだけだってオレは!」

「そうですよムウさん。ラクスにだって無理なんですよ。ただそれだけですよ・・・」

「いいからいいから!もっと素直になってもいいじゃない?オレのために乗らないでくれって言いたいでんしょう?ん?」

(・・・・・・)

ま、これがきっと本音だろうとムウは微笑む。なんとも憎らしい笑いだ。

それを見て今度はディアッカがムウに尋ねる。

「じゃあさ、あんたはどうなのさ?爆乳艦長がストライクに乗るって言ったら乗せるのかよ?」

クククと口元を上げてディアッカはムウを眺める。




「そうねえ〜オレは乗せるかもなあ・・・」

そんな意外なムウの言葉にふたりは眼をパチクリとさせた。

「乗せるって!マジか?おっさん?」

「ああ、でも独りでは乗せない。俺も一緒に乗るね!」

「一緒に・・・って?コクピット狭いぜ?シートもひとつだし、きついぜきっとさ?」

「だからいいんだよ!俺の膝の上にマリューを乗せてさ?身体を密着させてさあ・・・後から『危ない!』なぁ〜んて言って抱きすくめるのさ?
コクピットは狭いから逃げるに逃げられないからもうウハウハものだと思わないか?」

「・・・ムウさん。あなただけですよ、そんなバカなこと言っているのは。ねえ?ディアッカ」
そう言ってキラは呆れ返った。

(・・・・・・)

「ディアッカ・・・・?」

ディアッカから返事はない。

「おい・・・エロガキ?どうしたんだ?」








「・・・これだ・・・!」








「は・・・?」

「いいじゃんそのアイデア!イタダキだねっ」

「いただきって・・・どうしたのディアッカ?」

「今度のバスターでの哨戒パトロールにミリアリアも一緒に乗せて行こう!」

「なあ・・・オレの言ったこと冗談だって解ってるよな?そんなことお嬢ちゃんにするんじゃないぞ!」

「ククク・・・」

「おい!聞いてるのかディアッカ!」

「来週はミリアリアとデートだねっ」

「ディアッカ!こら!」





ディアッカはスタスタと歩き出す。

彼の頭の中ではどんな妄想が爆裂しているのか・・・まあそれは本人しか解らないのだけれど。





「キラっ!ディアッカのバカは何をしでかすか判ったもんじゃないからな!お嬢ちゃん近づけるなっ!絶対近づけるんじゃないぞっ」

「はい!ムウさん!」







さて・・・ディアッカが何を思いついたのか、この続きはまた後日に・・・。







「ククク・・・」











 (つづく)

 (2005.12.14) 空

 ※ ちょっと黒いディアッカ話を書きたかったんです。


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