先の大戦から1年経とうとしているが、その間、オレを取り囲む環境は無茶苦茶なほど激変してしまった。
まず・・・イザークの奴がオレの『上官』になったこと。
栄光の赤服を剥奪され一般兵に降格になったこと。
にもかかわらず、こなす業務は『隊長』のそれと同じで陰で『緑を着たエリート』などと呼ばれていること。
まあ、『脱走兵』&『裏切り者』として処刑されなかっただけでも儲けモノなのだからそれは別に構わない。
イザークの下で『事実上の隊長』として過ごす毎日に不満はないが・・・ないはずなのだが・・・ああ・・・!
『ミリアリア』に逢わせてくれよ!だってもう半年近く逢ってないんだぜ?
なあ・・・あいつに逢わせてお願いだから!
だって・・・あいつだけがオレの希望・・・!でなけりゃいい加減グレるぜホント!





あなたさまに逢えるのならば・・・!





「アカデミーからおまえに要請が来ているんだが・・・」
デスクでエラそーにふんぞり返っているイザークがこれまた面倒クサそ〜にオレに告げる。
「なんでしょうか?隊・長・殿!」
オレは思い切り嫌味っぽく答えると、奴のキレイな眉がピクリと動いた。
「いちいち隊長って呼ぶんじゃない・・・!」
「え〜っ?だってオマエはオレの上司じゃない?オレは緑の副隊長よ?」
「そんな事はどうでもいいわ!とにかくその呼び名はやめろ!」
「はいはい隊長殿!で?アカデミーからの要請って何なのさ・・・?」
イザークはまたも射殺すような視線をオレに向けたがそんなものは速攻無視だ。
「次期卒業生の出来が良すぎて逆に不安だそうだ・・・」
「・・・・・・はい?」
「だから次期卒業生の出来が良すぎて逆に不安なので何とかしてくれと頼まれた」
イザークの言葉にオレは怪訝な顔をした。
「はあ〜なんでだよ?成績がいいなら別に問題ないんじゃないの?」
だってそうじゃん。なんだかんだいってもモノをいうのは成績なんだし。
大きく溜息をつきながらイザークは呟く。
「それがあまりにも常識過ぎて柔軟性に欠けるのだそうだ・・・」
「ふうん・・・そういうもんかねぇ・・・で?そこでどうしてオレが出てくるのさ?」
「そのマジメな奴らにおまえのテキトー・・・いや臨機応変に生きる処世術の指導をして欲しいとのことだ」
なるほどそれってつまり『出来の良すぎる優等生のガキに世の中そんなに甘くない』と、突っ込めってか?
「ったくアカデミーもいい人選するんじゃね〜の?そりゃ確かにオレは適任だろうな。だけどさあ!オレだって忙しいんだぜ?そんなことは他をあたってもらいたいね」 メンドクサイのはパスだって。
「無論タダではない。見返り報酬もある・・・」
「そんなのあるのか?で、何なんだ?その報酬ってのは」
金なら欲しくね〜かんなオレ!
イザークはそこでニヤリと笑うと上目遣いでオレを眺めた。

『南海の真珠オーブへの旅一週間。経費、滞在費ともにZAFT持ちでしかもお土産付き』だそうだ」


オレは即座に返答する。
「ご命令慎んで拝命致します!後のことはわたくしディアッカ・エルスマンにお任せください隊長殿・・・!」
イザークおまえそれを早く言えって!これなら公認でミリアリアに逢えるじゃん!
その様子にイザークは呆れ返ってまたも溜息をついた。
「おまえのことだ。そう言うと思って既にアカデミーにはこちらから返事を出しておいた。明日午前7時ディセンベル市のZAFT本部まで出頭するように・・・!ってディアッカ!貴様まだオレの話は済んじゃいないぞっ!どこに行くんだっ」
「明日の準備がありますのでこれで失礼致します隊長殿!」
オレのハートは既にオーブ色に染められている。ああ・・・あの麗しの蒼!イザークの声なんてこれに比べりゃ所詮雑音。
オレがドアを閉めるのと同時にぶ厚い本が当たって落ちた。


**********


───本日より1週間君達の補習を担当するジュール隊副隊長のディアッカ・エルスマンだ。

周囲の声がざわついている。まあ無理もないか。本来『緑』の教官なんぞいないしな。
「で・・・何か質問はあるか?」そんなオレの声にひとり女が手を挙げた。
(へ〜っなかなかの美人じゃんよ?気の強そうなところなんてオレ好みかも・・・)そんなことを思いつつ発言を許可すると。
「ルナマリア・ホークです。陰で噂になっていますが、教官の実力は『緑を着たエリート』だとここで証明できますか?そうでなければこんな補習など受ける意味なんてないと思いますが?」
もっともな質問なので「よし。では5名で同時にオレに殴りかかってきていいぞ?誰か立候補する奴はいないか?」と促すと、先ほどルナマリアと言った女の他に4人が名乗りを挙げた。それぞれシン・アスカ。レイ・ザ・バレル。ヨウラン・ケント。ヴィーノ・デュプレ・・・と言った。
「へえ〜っなかなか元気あるじゃない?それじゃ5人纏めてど〜ぞ!」
言うより早く5人はオレにかかって来たけれど・・・正攻法じゃ詰めが甘い!
「バカ野郎!下をよく見ろっ!足元がガラ空きだぞっ!」
その声にふたりが足元を見る。「貰った・・・!」そのスキにオレは手刀でふたりの後頭部を打つ。
「こ・・・いつ〜!」マゼンタ色の眼をしたガキが大振りのパンチを仕掛けてくるがダメダメ脇が甘いって!
振り上げた腕を鷲づかみにして頭を入れると簡単に持ち上げられたガキを放り投げる。受身ぐらい出来るだろ?
「・・・ってえ・・・」投げられたガキはうめき声を上げてその場に寝転んだままだ。
「よくも・・・シンを・・・っ!」パツキンのボーヤがオレを睨み付けた。
なんだよこいつら!男同士のナニはパスだね!
恋人(?)を投げ飛ばされて冷静さを失っているボーヤなんてひねり潰すのなんかもう簡単。
「ほらほら足元がおぼつかないよ〜!」足を引っ掛けて手前に引くとパツキンボーヤは容易く転げ落ちた。
「なんだあ〜?口ほどにもないな。おまえら顔洗って出直して来いよ!」
嘲り笑うオレはまったく底意地の悪い不良青年そのものだ。

「教官・・・」

その声に振り向くとルナマリアが上着を脱いだアンダー姿でオレを見つめている。
(やっぱかわいい!これはお楽しみが増えたかも・・・)
「では・・・次はわたしのお相手をしてください・・・」
(潤んだ瞳でオレを誘う仕草がいいねえ・・・!)
「ん・・・じゃほら・・・もっとオレの傍に来いよ・・・」
せっかく誘ってくれるのだから・・・こちらもソレ相応に対処させてもらおうか・・・。
ルナマリアの腕がオレの胸目掛けて伸びてきた。
そして、隙を見てルナマリアが振り下ろしたナイフがオレの首筋に突きつけられた・・・かのように見えたが・・・。

「あ〜あ残念!せっかくいいトコまでいったのにね」
ルナマリアはオレに手首を掴まれ身動きが取れない。そのまま身体をねじ伏せて後から羽交い絞めにする。
「なあ、おまえ。オレに色仕掛けなんか10年早いね。聞いたことないのか?オレの噂・・・」
羽交い絞めにされたルナマリアの身体がビクッと強張った。どうやら噂を聞いてはいるらしい。
耳元に息を吹きかけるとルナマリアは「・・・ひ・・・」と息を漏らした。。
耳から顎のラインに沿って後から息を吹きかけるとルナマリアの膝がガクンと崩れる。
崩れた膝の間を割って足を滑り込ませると身体の震えは最高潮に達する。
そしてオレはそっと囁く。
「なあ・・・おまえオレにどうして欲しい?」
声になるかならないかの囁きにルナマリアの身体は崩れ落ちた。


**********


───それから1週間は何事も無く過ぎていった。

たった1週間ではあったが、臨機応変に対応するアカデミー生も出てきて卒業までに赤服着用の内定が下った者もいるらしい。
あれからルナマリアは毎日オレにセマって来るのだが、ことごとく逆襲され、その都度いいからかいの対象になった。
補習最後の日、オレはルナマリアに言ってやった。
「なあ・・・おまえどうせなら胸とか顔じゃなくチラリズムで勝負してみろよ。例えば見えそうで見えないスカートの長さなんか!アレはそそられるぜ・・・」
これは嘘じゃない。あのAAの中でオレは幾度もミリアリアの足に釘付けになったものだ。
あの見えそうで見えない微妙なスカート丈はオレのみならず、クルーの格好の慰めだったというのが公然の秘密だ。
あれは色気など必要ない。見えそうで見えないという微妙な期待感・・・!本当にそそられるのだ。
オレの話を黙って聞いていたルナマリアだが、その後会うこともなくオレはボルテールを寝床として哨戒にあたる日々が続いた。
アカデミーでのオレの評価はかなり上がったらしく、イザークの機嫌もすごぶる良い。
一部では『セクハラ』との声も上がったらしいが、『された』当の本人が否定したうえに有意義な補習だったとまで証言してくれたという。
他のアカデミー生からも『おもしろかった(・・・って何がと言いたいのだが)』『有意義だった(・・・ってどんな風に?)』という声も上がって、オレの目的は早々に達成できるかもしれない。

今朝、イザークから『休暇』の許可が下りた。約束どおりZAFTは公費でオレをオーブへと行かせてくれるようだ。

       やっとミリアリアに逢える。
       それだけが今のオレの希望であり、生きがいだと知っているやつは殆どいない。
       いとしのあなたさまに逢えるのならば何でもするのが今のオレ・・・。



     ※ 追記・・・見事アカデミーを優秀な成績+αで卒業したルナマリアのスカートの丈は
              『すばらしい・・・!』のひと言に尽きるほど短くて、
             ZAFTのお歴々を瞬殺ノックアウトしたというのは有名な伝説となっている。




   (2005.9.26) 空
 ※ makoさま長らくお待たせいたしました!
    『 種D設定で休暇(ミリアリアと会う為の)を餌にアカデミーで臨時の教官をする黒ディアッカ』をお届け致します。
    リクをいただいたときに『ルナのスカート』が浮かんでしまって・・・(笑)
    ここではミリィは出てきませんが、続編も書きたいな・・・と思っている私です。
    リクエストありがとうございました。

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