オーブの宇宙港に降り立つオレを屈託のない笑顔で迎えてくれたおまえ。
半年振りに見るその姿はAAにいた頃よりもふんわりとした女らしさが匂い立つ・・・。

(綺麗になったな・・・)

本当におまえは綺麗になった・・・まだ言葉には出さないけれど。






リセット







オノゴロの軍港を抜けると辺りはもう薄暗い・・・。

「ねえ・・・疲れたでしょう・・・あ、お腹空いてない?」
あれこれ心配するおまえはあの頃のままで・・・それがオレを嬉しくさせる。

「ああ・・・大丈夫さ・・・。それよりおまえは元気だったか・・・?身体の具合はもういいのか?」
「うん。すっかり元気になったわ・・・」
おまえはやさしい嘘を吐く。
そう簡単に癒せぬ傷は今もおまえの心から血を流し続けるのに。

借りておいたエレカを発進させると市街地から遠ざかってゆく。
初めのうちはキラやサイ・・・AAの仲間の話をしていたおまえの言葉が少なくなって・・・。
やがてオレに不安げに聞くのだ。

「・・・どこへ行くの・・・?泊まるホテルはこっちじゃないわ・・・」

「ああ・・・そうだな・・・」

それだけを答えると・・・オレはもう何も言わない。
おまえの顔が不安げな色を増すと・・・オレの中で何かが目覚める。

煌びやかなネオンの歓楽街の片隅に目的の場所がひっそりとある。
地下の駐車場にエレカを止めてやっと並んで通れる細い通路へとおまえを誘う。
その細い肩先から伝わる微かな怯えはオレをそそって離さない。




「着いたよ・・・」




そう言っておまえを中に招くと・・・オレはその厚いドアを閉めた。
中から鍵を掛けて外気を遮断すればもうここはふたりだけの密室。

窓ひとつないむき出しの石壁に薄暗いオレンジの間接照明と簡素なベッドだけの二坪の部屋・・・。

「ここは・・・どこなの!ねえ・・・!」

怖いだろ・・・?こんなところきっとおまえは初めてだから・・・。
オレはクククと笑い耳元で囁く。

(ここは牢獄・・・)

恐怖に震えるおまえを抱きしめ強引にその唇を塞ぐとおまえは必死に逃れようともがく。

ダメ・・・逃がしてなんかやらない。
だって・・・ずっとおまえが欲しかった・・・。
夜が訪れるたびに募る焦燥感・・・。
今・・・おまえの瞳は誰を映しているのかと・・・嫉妬に狂うオレがいた。
誰にも渡さないよ・・・。そうさ。おまえはオレのもの。

オレを忘れてしまったら絶対に許しはしない。
だから・・・その白い身体はオレを忘れないで・・・。

力ずくで奪うおまえの身体はこんなにも綺麗で、オレを惑わせるのが悪い。

泣き叫ぶおまえの中に入り込み深く強く突き刺すと声にならない声が漏れた・・・。




動きを止められない。

おまえをふたつに引き裂くかのように更に中へと進み・・・そして蠢く。

その動きに合わせておまえの身体は大きく・・・そして小刻みに揺れる。

おまえの意識とは裏腹に身体はオレを求めて開いてゆく・・・。

隠微な水音が響く・・・。

濡れ始めたおまえの白い肌の奥はこんなにもオレを捕らえて離さない・・・。

出しすぎて枯れてしまった声は息使いだけを伝え、もう抗う力も既にないのに本能だけがそこで動く・・・。



力を込めて強く貫くと・・・白い身体は弓なりに曲がって・・・その瞳に浮かぶのは大粒の涙。



虚ろになった瞳を閉じて・・・おまえは意識の底深く堕ちるとやがてそれきり動かなくなった・・・。




オレの肩に血を滲ませるほどくい込んだおまえの指先・・・。

身体をそっと外して額と頬と唇に・・・ひとつづつ落とす所有の証・・・。










**********










───眼が覚めた・・・?


その声にミリアリアはゆっくりと眼を開ける。

「ディアッカ・・・ここは・・?」
「ああ・・・オレの宿泊先だけどっ・・・て、おまえ憶えてないの?」
「ディアッカの泊まるホテル・・・?」
「そうさ。ZAFTが用意してくれた豪華なスイートだって。おまえすごく喜んでいたじゃん?こんな所初めてだってさあ?」
「そうだったかしら・・・?」
「おいおい大丈夫か?宇宙港で出迎えてくれたのはミリアリアだろ?」
「うん・・・そうよねえ・・・」
「なんだよ・・・変な夢でも見てたのか・・・?そんな妙な顔してさあ・・・」

ディアッカのやさしい笑顔にミリアリアは微笑みを返す。

「うん・・・ちょっとおかしな夢を見ただけよ・・・」

ディアッカは怪訝そうな顔をするも、ミリアリアにシャワーを促した。

「疲れたんだろきっと。シャワーでも浴びてくればスッキリするさ?」
「・・・そうね・・・疲れてたのよね・・・」
「ああ・・・。オレは先に浴びてきたからゆっくりしてこいよ・・・」
「ありがと・・・ディアッカ・・・」





───あれは夢だったんだわ・・・。

ミリアリアはシャワーを浴びながら思う。
とてもひとに言えない夢・・・。

地下牢に閉じ込められた挙句強引に奪われ・・・求められた身体・・・。
妖艶に・・・そして艶然と微笑むナイトメアのようなディアッカ・・・。
意識が無くなるまで抱かれ、身悶え、嬌声をあげた自分・・・。


(凄い夢見ちゃったわ・・・)


シャワーの後のことを思うとミリアリアの顔がすっと赤くなった。
(久しぶりだから・・・期待しちゃってるのかな・・・)
きっとそうに違いない・・・。





**********





ひとりベッドに腰を掛けてディアッカはミリアリアの消えたドアを見つめる・・・。

羽織ったバスローブの上から肩をそっと撫でた・・。

(痛・・・)

鏡に映すとそこはまだうっすらと血が滲んでいた・・・。

ククク・・・。

口を歪めて引き攣れた笑いを漏らす・・・。




(そうさ・・・あれは夢だったのさ・・・ミリアリア・・・)




だから忘れてもいい。




(でも・・・きっとおまえの身体は忘れないよ・・・いや、忘れる事ができないのさ・・・)

頭の中に記憶が無くても・・・身体は絶対に忘れない・・・。

ほの暗い闇の中の記憶・・・。

それはディアッカが施した『リセット』・・・。




(もう・・・これで一番最初に思い出すのはオレのことだよ・・・)




潜在意識にすり込まれた巧妙な記憶・・・。

身体を重ねる度に思い出す記憶・・・。

どんなに距離をおいても離れられない身体の記憶・・・。






───リセット───






どんな時でもミリアリアが最初に思い浮かべるのはディアッカのこと・・・。

もう離れられないようにと彼が施した行為・・・。









リセットされたミリアリアの記憶・・・・・・。
















 (2005.9.30) 空

 ※   『黒さ70%のくせに純・・・なのにパラノイアで行動は鬼畜』


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