
「なんだ・・・もう脅かさないでよディアッカ・・・・今、また誰かにあとをつけられていたんだから・・・。」
ミリアリアは、入ってきたのがディアッカだったので、緊張がとかれていく。
「ねえ・・・外・・・誰もいなかった?」
不安げにディアッカに尋ねるが・・・
ディアッカは黙ったままミリアリアを見つめている。
「どうしたの・・・?ディアッカ」
・・・何も言わないディアッカにミリアリアは不安を感じた。
ディアッカは灯りもつけず、そのまま動こうとしない。
ほの暗さが映し出す紫の瞳はミリアリアを捕らえたままだ。
その瞳の冷たさに・・・ミリアリアは思わず後退りをする・・・。
いつもと違うディアッカの気配に「何か」を感じた。
「どうしたの?そんなコワイ顔しちゃってさぁ・・・こっちにおいでよ・・・ホラ」
優しい言葉とは裏腹にディアッカの宝玉のような瞳は氷のような輝きを放つ。
ミリアリアのなかで何かが音をたてて崩れていく・・・そして気付いたことがある。
・・・あの視線は、ひとりでいる時だけしか感じなかった。
・・・そうだ・・・視線を感じない時ミリアリアはいつもディアッカと一緒にいたのではなかっただろうか・・・?
先刻の足音も・・・ミリアリアがここに来てすぐに追いついて・・・息をつく間も無くロックが開いた。
まるでミリアリアがここに・・・ディアッカの部屋に逃げ込むことを知っていたかのように・・・。
───ここに立っているのはディアッカ───・・・。
ミリアリアはたまらなくなって叫んでいた。
「・・・・・・ディアッカだったの?あの視線も・・・追いかけて来たのも・・・みんなみんなそうだったの・・・?」
「お願い!答えてよ・・・ディアッカ!」
「やっと解かってくれたんだ・・・。もっと早く気付いてくれると思っていたんだけどね・・・」
───・・・・・・・他人を圧倒するほどの美貌を持つコーディネイターの男は、そう言って艶然と微笑んだ。
「さて・・・どうしようか・・・」
一歩・・・また一歩・・・ディアッカはミリアリアに近づいてくる。
「言っておいただろう?・懸想したオトコは怖いよ・・・って」
「お願い・・・こっちに来ないで!」
ディアッカが近づくにつれて、ミリアリアの足はじりじりと下がっていく。
「話しただろう?ストーカーになっちまったオトコのこともさぁ・・・」 ククク・・と笑ってディアッカは更に距離を縮める。
身体が壁に当たって・・・もう逃げ場がない・・・逃げなきゃいけないのに・・・ああ!足が動かない───。
ディアッカの腕が伸びてミリアリアの喉元を押さえ込む。恐怖心が一気に高まる。
耳元で、ディアッカは艶に濡れた淫猥な声で囁く。
(・・・・・・覚悟しろよ・・・・・・)
首筋を撫でられ、そのあとに舌の感触が続く・・・その感触にミリアリアの身体はゾクリと震えた。
───最初はキスから・・・・。
顎を持ち上げられる。ディアッカはミリアリアに自分の唇をそっと重ねた。
何度も何度も繰り返し口吻をする。
僅かなスキをついて逃げ出そうとするミリアリアだが、それはディアッカの周到な計算。
今度は背中から羽交い締めにされる。
柔らかな感触を味わいながら
そのまま乳房を揉み解すとミリアリアの身体がピクン・・・と反応した。
耳朶を軽く噛みそのまま肩先まで唇を這わせそっと囁く。
・・・力を抜いて・・・オレにまかせて・・・それは・・・甘い蕩けそうなテノールボイス。
だがミリアリアはその声とは反対にディアッカの胸の中で激しく抵抗する。
(いやっ!・・・放して)
ディアッカはその抵抗さえも利用してミリアリアの身体の向きを変えた。
コーディネイターの軍人の男。力で敵う筈もないのに、腕を捕まれてミリアリアはなおも抗う。
やがて正面から抱き締められ徐々に力が込められて行く。
その力の強さに圧倒され、苦しさのあまりミリアリアは顔を上げた。
そこにあるのは妖艶なまでに美しいディアッカの表情。艶然と微笑み再びミリアリアに唇を重ねる。
今度は先ほどとはうって変わって執拗なキスになる・・・
ディアッカはミリアリアの頭を、背中に廻していた腕で固定して押さえ込んだ。もうこれで動けない。
長いキスに呼吸が出来ないミリアリアが僅かに唇を開いた。
そのスキにディアッカは自分の舌を差し入れた。
ディアッカの貪る様な貪欲なキスは果てしなく続けられる。
(・・・息が・・・出・・来ない・・・・苦し・・・)
ディアッカを押し退けようとしても動けない。
息も吐けずに舌を追い求められる深いキス。
それはミリアリアの意識を混濁させ、朦朧とさせる。
(あ・・・・・)
膝から力が抜けて、ミリアリアはストンと落ちた───。
ディアッカはそのままミリアリアを抱き上げてベッドに運び、そっと降ろしたした。
そして自らもベッドに腰を下ろすと意識のないミリアリアの軍服に手をかける。
ジッパーを下げる音がやけに大きく響く。
アンダーシャツをまくし上げたが、どうにも脱がせ難いので、力を入れて引き裂いた。
ビリビリ・・・というその音に刺激されるのはどういう事だろうか。
白いレースのブラを外すと、形のいい乳房が覗いている。
ミリアリアの肌はミルクの様に白く、薄紅色の乳頭はSEXの経験の少なさを思わせた。
靴を脱がせ、ソックスを取ると、妙に艶かしく見える。
スカートを外すとパンティ1枚の姿になった。以前よりは体重も戻ってきているが、
まだ回復までにはいかないその身体はやはり痛々しかった。
それなのに、こうして抱こうとする自分はどうかしているかもしれない。
でも・・・もう誰にも渡したくない。
自らもジャケットを脱ぎ、上半身だけ裸になる。
その身体がミリアリアの上に覆いかぶさると、彼女は反応を返した。
ディアッカは、その柔らかさに溺れそうになる。
彼女を抱くのは初めてじゃない。
ひとつのベッドで朝まで一緒に眠ったこともあったし
泣きじゃくる身体を抱いたことだって何度もあるのに、裸の温もりはなんて心地よいのだろう。
(今まで抱いた女の身体がウソみたいだな・・・)
こんな恍惚感はほかの誰とも味わえなかった。
美しいコーディネイターの女ばかり抱いてきたのに、
ナチュラルの彼女がここまで自分を夢中にさせる。
このまま朝が来るまで抱いているだけでいい・・・と思う反面・・
あの蒼い瞳を覗き込んで、堕ちるところまで堕ちていきたいと願ってしまう。
さすがに気を失ったままのミリアリアを手にかけようとは思わない。
彼女の意識が戻るように、全身に接吻をする。
髪の毛のひと房から足の先まで。
吸い付けば鮮やかな紅い痕が付いた。
全身に付いてゆく紅い痕は自分のものだという烙印。
簡単にはとれないように強く深く刻み付ける。
痛みを伴うその行為は徐々に彼女の意識を浮かび上がらせる。
ゆっくりと開かれていく蒼い瞳はディアッカの姿映し出すも、
まだこの状況をのみ込めないでいる。
(綺麗な紫の眼・・・)
ミリアリアは霞がかった意識の中でそう思った。
唇が触れた。しっとりとした弾力のある温かい唇。記憶のどこかで彼女はそれを覚えていた。
(ん・・・あ・・ぁ・・・・)
口内を蹂躙していく舌の感触にようやく意識が完全に戻った。
自分が何をされているのかを悟る。
(いや・・・・・・!)
全身の力を込めてミリアリアはディアッカを拒絶するが
鍛え抜かれた軍人の男にはたいした抵抗ではない。
「気が付いた?」
艶然と微笑むディアッカの顔。
首筋をなぞる舌のザラついた・・・それ以上にねっとりとした感触が背筋を粟立たせる。
ディアッカの身体はミリアリアを溶かし込んでゆくかの様に熱い。
その熱にじわじわと重みが重なってベッドにミリアリアを沈み込ませる。
「お願い!もうやめて!お願いだから帰して・・・!」
「今更そんなコト聞くオレだと思う?」
ミリアリアの両腕を掴み、ベッドに押し当てる。
そのままディアッカの唇は白い胸の突起に触れた。
軽く歯をたて舌で転がすとミリアリアの身体は小刻みに震えた。
「声を出すと聞こえちまうぜ?この状態どう言い訳する?」
意地悪気にディアッカが囁く。
この部屋は防音である。機械に詳しいディアッカが独自にプログラムしたのだ。
だから・・・ここは泣き叫ぼうが喚こうが、誰も来る筈も無い完全な密室。
乳房の線に舌を這わせ柔らかな感触を楽しむが、ミリアリアの抵抗はまだ止まない。
必死に身体をよじらせディアッカの責めをかわそうとする。
「あんまりいうこときかないと・・・」
ディアッカはそう言っていきなりミリアリアの両手首を後ろに廻し捩じ上げた。
信じられない・・・といった表情でミリアリアはディアッカを見つめた。
恐怖に支配されるミリアリアの顔・・・。そんな彼女の姿にディアッカは引き攣れた笑みを漏らす。
ミリアリアには覚えのある微笑み・・・。
これは、彼が拘禁された直後に見せた冷笑。彼の持っているもう1つの顔。
恐怖のあまりミリアリアが思わず叫んだ言葉は・・・
「トール・・・!」
その言葉に残忍で凶暴なディアッカが眼を覚ます。
「何て言ったの・・・もう一度言ってみろよ!」
狂気に彩られたディアッカの瞳はミリアリアを射殺すかのようだ。
爪をたて、ミリアリアの乳房を鷲づかみ、捏ねくりまわし華奢な肩に噛痕を残す。
「ひ・・・う・・・ああ〜っ!」
あまりの激痛にミリアリアは泣き叫ぶ。
「トー・・・ル・・・あ・・・」
ミリアリアの眼の前の男は愛しい恋人とは似ても似つかないコーディネイター・・・
こんな時でさえ、彼の姿は禍々しい程の美しさを見せ付ける。
ミリアリアの頬を涙が伝う。
「いくら呼んでもトールは来ないぜ?それくらいは解っているだろ?オマエだってさ」
狂気の眼をしたディアッカがミリアリアに問いかける。
伸ばした手がミリアリアの喉を絞めた。
(・・・か・・・ぁはあ・・・ぁ)
息ができないミリアリアはに口元を開く。
「トールなんて呼べないようにしてやるよ・・・」
人間の姿をした・・・獲物をいたぶる獣がいる。
ディアッカはミリアリアに接吻すると、再び舌で蹂躙し始めた。
身体を起こされ、ディアッカの膝の上に乗せられる。
絡みつく腕と込められた力の強さに翻弄される。
ミリアリアは眩暈を起こしていた。
「おねが・・・ぃ・・眩暈・・・気持・・・ち・・・悪・・・」
グラりと、ディアッカの胸に倒れ込む。
意識は残っていたが身体がいうことをきかなかった。
「辛い・・・?」
先程とは全く違う彼の優しい声にミリアリアは微かに頷く。
「そう・・・じゃぁもっと辛くしてやろうか・・・。」
猫なで声で、なのに狂気の眼のままでディアッカが笑う。
ミリアリアはそのままベッドに寝かされる。
眩暈を起こしている身体はもう、抵抗できるだけの力は無かった。
ミリアリアを包んでいた最後の一枚を脱がせたディアッカは、自分自身も裸になると、ミリアリアの身体にみずからを重ねた。
耳元で(ミリアリア・・・)と囁かれる。
とろけそうな甘い声。
先程の残忍な彼と・・・本当に同一人物なのかとミリアリアは思う。
ミリアリアの息が上がる。
(もう・・・やめ・・・て・・・)
声をあげないように必死で耐えるミリアリアの姿にディアッカは笑みを漏らす。
虚ろな瞳のミリアリアの額に接吻をおとす。
半ば暴力的な交わりなのに、ミリアリアにはわかっていた。
ディアッカが力をセーブして自分を抱いていることを。
ミリアリアを抱き締めている時の彼はいつも物凄い力を込めた。
時には意識を失う程強く抱いた。
そんなディアッカが自分をどんなに大切にしてくれていたか。
いつもいつも心配して、後を付いて来てくれていたことを思い出す。
彼がAAに残ったのは、ミリアリアを守るためだったと誰かが言っていた。
きっとそれは本当のことで、自分だけがそれを認めようとはしなかった。
戻れた故郷に帰ることもせず、自分のそばに居てくれたのに、
そんな彼に自分はどんなに冷たかったか・・・
ディアッカをここまで追い詰めたのは自分なのだとミリアリアは思う。
こうして暴力的に抱かれているのに・・・嫌悪感はなかった。
もう、数え切れないほど自分を慰めてくれた胸の中だ。
身体がよく知っている。護ってくれた力強い腕も。
あるのは罪悪感と後悔。
眼を開けると・・・ディアッカの瞳がミリアリアを見つめていた。
先程の狂気の色はもう無かった。
あるのはただ淡い紫だとミリアリアは感じていた。
ディアッカの息遣いも荒くなる。汗ばんだ身体はブロンズ像のような美しさ。
「俺を見て・・・」
艶やかな声が自分を呼ぶ。
「今だけでいいから・・・トールじゃなくて俺を見て・・・」
どこまでも甘い声に翻弄されて、ミリアリアの意識は闇の中へ紛れて・・・消えた。
どうやって自分の部屋に戻ったのか、ミリアリアには記憶がない。
朝、目覚めた時にはディアッカの姿はなく、情事の名残りを思わせる衣類の残骸だけが散らばっていた。
ナイトテーブルに簡単な走り書きで部屋のロックパスワードが記されていた。
そこは確かに彼の部屋で、愛用しているオレンジのトワレの残り香が枕に染み付いていたのを憶えている。
散らばった衣類をかき集めてミリアリアはシャワーを浴びに浴室へ入った。そして──・・・
薄暗いライトの元、鏡に映った自分を見て息を呑んだ・・・。
ミリアリアが見たのは・・・
身体中至るところに付けられた紅い痕・・・。
それはディアッカが付けたキスマーク。
首筋にも肩や胸にも・・腕、腹部、背中・・・腿・・・。
眼に映るありとあらゆる場所に残された所有の証。
そのまま、ミリアリアはシャワーも浴びずに服を着た。
以後の記憶が欠けている。
気がついた時はもう既に夜で、しかも自室に戻っていた。
艦長に謝罪の連絡をすると、朝のうちにディアッカから、
ミリアリアが倒れたので薬を処方して休ませたいとの申し入れがあったことを知らされた。
周到な根回しのよさが彼らしいとミリアリアは思う。
まだ身体中に情事の痛みが残っている。
あんなに激しく抱かれたことなどなかった。
それでもディアッカはミリアリアの身体を気遣って力を込めたりはしていない。
本気で挑まれたら・・・今頃はどうなっていただろう。
考えたくはなかった。
誰にも会いたくなかった。
会って何かを聞かれるのはもっと・・・もっと嫌だった───。
(2004.11.30) 空
※ 品の良い「裏」を書きたかったのですがー!自分には無理でした(自爆)
パラノイアバージョンですね・・・これは。
元のバージョン3部作の3(非公開)