ドアを開け周囲を見渡し、そっと通路へと足を踏み出す。
夜中の1時を過ぎている。
シフトの交代時間も終っているので通路はもう誰もいない。
クルーの半分は仕事に、半分は眠りに就いている。

ミリアリアは展望室へ向かった。
誰もいないこの時間に展望室でひとり過ごすのは、ミリアリアにとっては至福の時だ。

展望室は漆黒の闇に包まれている。
この時間は通路からの灯りが僅かに漏れているだけだ。

一番奥の柱の影に腰をおろす。
通路からだとそこは死角になって見えない事をミリアリアは知っていた。

窓から星の海を眺める。
何故ここが落ち着くのか自分でも解らないが、このまま朝が来るまで過ごしたいのだ。

動力の推進音だけが唸る寂しい場所だ。
自分の存在など無きに等しい。

クサナギの姿が見えた。あの艦にもたくさんの命が乗っている。
もしかしたらミリアリアの乗っているAAを見ている人がいるかもしれない。
自分はひとりじゃない筈だ。たくさんの仲間がこうして宇宙空間を彷徨っているのに、独りぼっちだと思ってしまうのは・・・
隣に居る筈の恋人が逝ってしまったからなのかと自問自答を繰り返す。

闇は優しい。疲れたミリアリアを隠してくれる。
このままずっと隠してくれたらいいのに・・・と思う。

オーブから宇宙へと飛び立ったあの日から。
人前では泣かないように振舞って来た自分だが 、涙が溢れて止まらない・・・。
早く元気にならないといけないのに、ひとりでいるともう止めようがない。





───そんな時にはいつもディアッカが傍にいた。





どうして泣いているのがわかってしまうのか。ディアッカは絶妙のタイミングで現れては軽い言葉で雑ぜ返す。
ミリアリアはいつも展望室にいるわけでなく、倉庫だったり、リネンルームにいたりするのに、
彼はいつも確実にミリアリアの前に現れた。











───そして・・・不意に空気が動いた。











人の気配はしない。動力音だけが響いている。・・・けれど・・・・・・。











微かに・・・闇に紛れて漂う香りは───『オランジェ』・・・。








          ───闇のトワレ───








それは・・・どんなに息を潜めて気配を殺していても彼がここにいる事を示す証・・・。













 (2004.10.21) (2005.4.25改稿) 空

 ※ ミリアリアは自分を見つめているのが誰なのか解っているけれど、口に出せない。



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眠れない夜に・・・。

闇のトワレ