グランドロマン    おまけ






───いやっ!やめて・・・・・・!




いいじゃねえかよ!・・・もうあのコーディネイターの奴には捨てられたんだろう?
オレがうん〜と可愛がってやるからおとなしくしろよ!

そんなんじゃないわ!だれがアンタなんかにっ・・・・・!放してよっ!

私をいつも嘗め回す様な目で見ていた整備班の男。
いきなり連れ込まれた部屋で襲いかかってきた。

脂ぎった目で・・・腕で・・・口で私を嬲る・・・やめて・・・!
助けて・・・助けてディアッカ・・・。


ディアッカ───っ!














───気がついた・・・?

(あ・・・・)

眼の前にあるのは・・・ラベンダーの紫・・・。
長い睫を伏せた端整な顔の・・・

「ディアッカ・・・」

「ああ・・・かなりうなされていたけど・・・大丈夫みたいだな」

「ここは・・・・」

「ん?ここはオレの部屋だよ。おまえ・・・あの後気を失っちゃったもんで、オレがここまで運んだの」







───そうだった。

あの後ディアッカに助けられて、いろいろあって・・・それからどうしたんだっけ・・・?
身体が重い・・・汗をかいているの・・・?
下着が・・・冷たい・・・・下着・・・?

はっとして胸に手を当てる。
(あ・・・ちゃんと着てる・・・)

「あのなあ?いくらオレでも気を失った女に手は出さないぜ?・・・安心しろよ」

ディアッカはそう言って柔らかい笑顔を私に向けた。




「一気に緊張が解けたんだよ・・・おまえ・・・ずっと気を張り詰めていただろう?
2、3日は起き上がれないからゆっくり休めよ・・・」

「あ・・・シフト・・・」

「大丈夫だよ。キラとアスランが応援に来てくれているから・・・とにかく寝てろよ」

ディアッカはそのまま私を寝かしつけようとしたが、ひどく汗をかいている身体に気がついて。
「先に着替えたほうがいいな・・・とりあえずおまえの部屋から持ってきてあるから・・・」
そう言って、私の上体を起こしアンダーシャツを捲し上げた。

「ちょっとやだ・・・ディアッカ!」

「変な気はおこしてないから素直にオレのいう事をきけよ・・・これでも医者のタマゴなんだぜ?」

「いいわよ自分で着替えるから!こっちにちょうだい」
いくらディアッカにその気が無くてもやっぱり私が恥ずかしい。

「うわ・・・ベッドまで染み込んでる。しょうがないからあっちのベッドに移すよ。着替えたら呼んで」

「うん・・・」
私はカーテンをひいた。

隣でガサガサ音がしている。メイクベッドをしているのだろうか。

汗で汚れた肌着を脱ぐと、カーテンのすき間からディアッカが熱い蒸タオルを差し入れてくれた。
肌着を替え終えてディアッカに声をかけると、
「ちょっとガマンして」と、私を軽々と抱き上げ、隣のベッドに寝かしつけた。

ディアッカの部屋は2人用の士官部屋だからそれなりに設備は整っている。
防音だし、ベッドも多少は広く作られている。
こっちのベッドはディアッカが日頃使っている方で、こうしていると彼の匂いに包み込まれているようだ。

ふと見上げると、点滴の空のパックが2本吊るされていた。

「今・・・何時?」
そんな私の問いにディアッカから夜中の1時過ぎだという答えが返ってきた。
もう半日もすぎていたのだ。その間、彼はずっと私についていてくれたのだろうか。







「なあミリアリア・・・この写真どこで手に入れたの?」

出し抜けに聞かれてディアッカのほうを見ると、彼は例の婚約者の写真を手にしていた。

「それ・・・エターナルで渡されたのよ。あんたの婚約者だって聞いたけれど・・・凄く綺麗なひとじゃないの」

「ああ・・・そうなんだけれど名前何て言ったんだっけ?オレもう全然記憶に無いんだわホント」

「え・・・だってあんたの婚約者なんでしょう?名前も記憶に無いなんて・・・どうして?」

「だって2、3回会っただけだぜ?それだって何年も前の話だもんなぁ・・・親同士が決めたことだしさ」

「おまえはオレに婚約者がいるっていつ頃から知っていたの?フラガのおっさんの話だとかなり前から
知っていたみたいだけど・・・」

私は正直、こんな話はしたくなかったが。
「オーブにいた頃よ・・・。あんたがまだ捕虜で、私が食事を運ぶようになる前よ」
そうありのままに答えた。

ディアッカは頭を抱えると大きく溜息を吐く。
「あ〜あ・・・なるほどね。おまえがオレを信用してくれない理由がやっと解った」

ディアッカはいつものように口の端だけ上げてクククと笑った。

「ごめんなさい・・・」

返事はなかったが・・・ディアッカは微笑んでくれた。







───さて・・・時間だな。

「注射を2本うつから、そうしたら眠るんだぜ?」
器具の準備をするディアッカは既にに医者の顔つきになっていた。

ディアッカは私の腕に2本の注射をして、処置を施す。プラントの国家試験こそまだ受けていないが、
特Aランクのインターンで薬剤師の免許を既に所持するエリートだと、ミリアリアはキラから聞かされている。
戦争のせいで試験を受けるのが遅れているが、医局のトップに立つ父親の跡継ぎとして期待されている彼なのだ。



───ミリアリア・・・

「もう少しおまえが元気になったらオレの話をしてやるよ。オレがなんでザフトに入隊したのか、
婚約者の事も、プラントの婚姻統制の事も、オレやアスランやラクスが抱えるセカンドコーディネイターの致命的なエラーもな」

ディアッカの長い睫が影になる。

「ねえ・・・今日あんたはどこで寝るの?ベッドは私が占領しちゃたし」
薬のせいでぼんやりとしてきた頭で私はディアッカに尋ねた。

「おまえの隣・・・少し空けてくれればいいよ」

まったくこんな歯の浮くようなセリフよく言えるわよね。でも不思議と彼には似合う。

「そういえば何度も一緒に寝たのよね・・・可笑しいわよね私たち・・・」

「そうだな・・・」

こんな時のディアッカの眼はいつも伏し目がちで穏やかで。

「薬が効いてきただろう。もういいから眼を閉じろよ」

「うん。おやすみ・・・ディア・・・カ」

「ああ・・・おやすみ・・・」





───爽やかなオランジェの香りがする。

     あたたかい何かが唇に触れた。

     声が・・・聴こえる。

    ・・・蕩ける様な・・・甘・・・い・・・声・・・・・・。










 
(2004.12.22)(2005・6・13〜15にかけて改稿)

※ 元ネタは『スターどっきり○秘報告』・・・オバカな私!




妄想駄文へ