15: 言葉





スキとかアイシテルとか、昔は散々口にしたものだ。
オンナを口説くときの常套手段というヤツで、ああ・・・オレってホントに軽かったんだとつくづく思う。


本気で惚れた女ができて、さあ告白しよう!と、女を呼び止めたまではよかったが・・・。



「なあ・・・ちょっとその・・・」

「なによ・・・なんか用でもあるの?」


「いや・・・だからあの・・・」

「だから何なの?ハッキリしてよ!」






───出てこない・・・・・・!







ちょっとまて!散々口にしてた言葉だろ〜!なんで出てこないんだよ!
たったひとことじゃんか!






「あの・・・オレさ・・・すき・・・・」

「・・・は?」

「おまえが・・・好きなんだけど・・・」

「なにをぼそぼそ言ってんのよ?よく聞こえないわよ」

「だから・・・大好きなの!」










「よかったわ・・・大好きで・・・」

暫くの沈黙の後に彼女はオレをじっと見つめてこう言った。

オレは嬉しくて腕を伸ばす。

彼女を抱きしめようとして・・・・・

     「?」

渡されたのはお盆に乗ったおにぎりの山!

「あんたの口に合うかどうか心配だったんだけど・・・大好きだとは思わなかったわ!
マードックさん達と仲良く食べてね」




好きは好きでも好き違い・・・。




カナシイ彼女のひと言に呆然と立ち尽くすオレがいた・・・・・・。













───そして通路を曲がって彼女は大きく息をする。


『オレさ・・・おまえが・・・好きなんだけど・・・』

本当はちゃんと聞こえてる。

おにぎり抱えた状態で、告白シーンはないんじゃないの?と、彼女はちょっとご機嫌斜め。

男ごころも大変だけど、女ごころはもっと複雑。








稀代のプレイボーイもそこまで解っていなかった・・・・・・と、いうお話。








 (2004・10・22) 空

※ よし!健全だ。

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