紙の様に燃え尽きた艦の名はヴェサリウス・・・かつて俺が乗っていた艦・・・。







JUST TWO OF US






紅く炎を上げる艦───
敬礼を送る人影が見える。
かつて俺が乗っていたその艦を今日は敵としてこの世から消した。
AAに戻った時から解っていた筈だ。
いつか来るだろうその日が今日だったという・・・ただそれだけのことだ。

何故なら・・・この世のすべてに代えても護りたい存在があった。
南の海の蒼を模した瞳の虜にされて・・・もはやそれから逃れる術を俺は知らない。








食堂の入り口で彼女はずっと立っていた。
俺に声をかけるでもなく、ただ、俺の事を見つめているだけだ。
今日という日が来る事を一番よく解っていた彼女だから、今更俺に言うべき言葉もないのだろう。

「いつまでもそんな所に突っ立っていると風邪ひくぞ・・・」

そんな俺の声に、彼女は静かに入ってきて傍らで歩みを止めた。




「そんな顔するんじゃないよ・・・今更だろ?」

大きな瞳は凍りついた様に俺を見ているだけで、そのまま動くこともしない。

突然彼女の細い腕が俺を包んだ。

柔らかい胸に俺を抱きこんで耳元で・・・たったひと言呟いた。







───あんた本当にバカだから・・・







本当に悲しいときは涙なんて出ないのだと、俺はこの時初めて知った。

心臓の音が聞こえる・・・。

規則正しいその音は・・・ゆっくりと俺の中に滲みこんでくる。

まるで・・・波の様に繰り返し繰り返し・・・。

彼女の腰に腕を廻して・・・。

抱いて・・・強く抱き返して・・・。

思いは・・・より深く思いを伝えて・・・。




彼女の心臓の音は南のオーブの蒼い海の・・・寄せては返す波の飛沫。

この世の続く限り終わることはない連鎖・・・。






抱いて・・・抱き返して・・・・・・そして思いは心を返すのだ──

今、彼女の思いがゆっくりと俺の中に入り込んでくる・・・・・・。









              寄せては返す波の様に・・・。
















 
  (2004.12・17) (2005・6・16 改稿) 空


 ※ JUST TWO OF US 『 ふたりきり 』 という意味です。
    あのワンシーンに、どれ程のディアミリストが思いを寄せたでしょうか・・・。



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