ミリアリアは、ディアッカとサイの3人でランチを摂っていた。
さっさときれいに食べ終えるディアッカ。
ゆっくりと良く噛んで食べるサイ。
で・・・ミリアリアはというと・・・
食欲がないのは誰もが知っているが、今日は一段と酷い有様で、殆ど何も食べていない。

「ミリィ・・・ちゃんと食べないと身体によくないよ・・・」

「うん・・・解っているんだけどどうしても欲しくはないの」

そんなやり取りを横で聞いていたディアッカが。

「じゃ、オレが貰うよ」

そう言ってミリアリアのトレイを取り上げた。
そして・・・あっという間に平らげて、食後のコーヒーを飲んでいる。

その様子をポカンと見ていたミリアリアの視線に気が付くと、いつになく真剣な表情で。

「ミリアリア。おまえ食べられないなら最初から少しにしてもらえよ残したら勿体無いし、厨房担当のクルーに悪いだろ?」

軽薄で飄々とした、いつものディアッカとは到底思えないセリフにその場にいた誰もが唖然と彼を見つめた。

「プラントは人口の大地だろ?食料を定量生産し、安定させるまで随分長い時間がかかったんだよ。
オレの親父が若い頃の話だけどね・・・20年位前かな」

故郷の話をするディアッカはとても珍しい。

「ユニウス7に核を撃たれたのだって、食料を抑えられたらいくらコーディネイターだって日干しだぜ?
飢えて死んでしまうだろ?」

ユニウス市は農産物のプラントだ。

そこに核を撃ち込まれて黙って済む訳が無い。
それ故に戦争は避けられなかったのだとミリアリアでも解っている。

「だから・・・食べ物は粗末にするんじゃないよ。普通食が食べづらいなら、オレがメニュー組んでやるからサ!」

・・・なんてこれもまた珍しいディアッカのセリフ。

「悪い!用事があるんで先にいくな~」

立ち上がり、ミリアリアの額にキスをして、ディアッカは食堂から出ていった。

食堂は騒然としている。

      『・・・意外だ・・・!』

いつも軽く、お気楽で飄々と、あるいは不遜な態度を崩さない、そんなクルーの知っているディアッカ像とは、あまりにもかけ離れていてみな驚きを隠せなかった。











──数日後

やはり3人で朝食を摂っていると・・・。

「エルスマン・・・これ!」

そう言って厨房のクルーからディアッカの前に置かれたものは器いっぱいのカットメロン。

「何・・・食べていいのかよコレ?」

怪訝な表情のディアッカに

「ああ・・・オマエさんのお陰でな、誰も食べ残し出さないんだわ片付けは楽だし、無駄も出ないしホントありがたいわ・・・で、お礼だよ!」

「へえ~そいつは嬉しいね。ご馳走様!」

このご時世にメロンとは豪勢じゃん?とニコニコ顔のディアッカは隣に座っているミリアリアのプレートを覗き込んで。

「ちゃんと食べてるな・・・どう?オレのメニュー足りているか?」と尋ね、

「うん・・・丁度いいよ」

と、いつに無く素直なミリアリアの返事にとても嬉しそうな顔をした。

「じゃ、これも食べろよ・・・おまえらもいいぜ?」

そう言ってメロンをテーブルの中央に置くと、そこから少し取り分けて美味しそうに食べ始めた。



───余談だが・・・

ディアッカって意外と真面目な一面があると周囲の評価が変わったのは、これがきっかけである。




  (2004・9・15) (2005・4・10 改稿) 空

    ※小説版を読んで思いついたネタです。
      こんな一面・・・彼には有りそうだと思うのはアタシだけでしょうか?

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26:意外だ・・・!