HOT SPOT
AAの朝(?)は、けたたましさから始まる。
「もう!しつこいわね!ミリィって呼ばないでって何度言ったらわかるのよ!」
「じゃ〜なんて呼べばいいんだよ!アナタサマ〜でいいのかよ!」
「用がないなら声掛けないで!」
アークエンジェルの新名物 「夫婦モドキ喧嘩」
先日2ヶ月近い拘禁生活から解放されて、
めでたく自由の身となった、ディアッカ=エルスマン君 17歳。
本国プラントでは、コーディネイターエリートとして注目の的だったのに・・・。
言い寄るオンナは数知れず、コマしたオンナも数知れず!
なんて、超モテモテ男の彼が、こんな扱いされてまで追いかけてるのは・・・?
ナチュラルのミリアリア=ハウ嬢 16歳。
ディアッカ君の身の上を案じ、同情したのがまさに彼女の運のツキ。
それ以来・・・彼はどこへ行くのにも尻尾を振ってついてくる有様。
オマケに超が付く程の美貌の持ち主である為に
目立つのなんのって・・・本当にもう始末におえない。
「おう!ボーズ!今日もがんばってるな〜!まだオトせないのかい?」 と、
いつも陽気なムウ・ラ=フラガ。
「うるせ〜っつ〜の!アンタは爆乳艦長でも追っかけりゃい〜んだよ!」
「フラガ少佐!アタシはこんな奴どうでもいいからも〜とっとと捨ててきてください!」
「オマエ俺をゴミ扱いするのかよ!ホントとんでもね〜オンナだよな!」
「ゴミだなんてそんなかわいい物じゃないわよ!歩く放射性産業廃棄物よ!有害のひと言につきるわよ!バカ!」
ムウ・ラ=フラガ 28歳 呆れた顔で、
「はいはい・・・とっとと朝食とってらっしゃいお2人サン」 と、さすがはオトナ。
───食堂はシーンと静まり返っている。
お互い牽制しあって、息をひそめて待っているモノ・・・。
「ちょっとついて来ないでよ!どっか他の所あいてないの! 」
「見りゃわかるだろ!ここしかね〜ことぐらいはよォ〜!第一俺の勝手だろ!」
「あ・・・キラ!サイもおはよう!」
「おはようミリィ。今日も元気だねえ!外からでも聞こえてくるよ・・・」
サイ=アーガイル 17歳。幸か不幸か仲間の保護者と成り果てて・・・溜息ひとつ、もうひとつ。
「キラも聞いてくれよぉ〜!コイツなんでこんなに可愛げないんだよ!」
「それは君にだけだと思うけど?ねえディアッカ、自分でそうは思わない?」
キラ=ヤマト コーディネイター16歳。優しい顔して口にするのは皮肉混じりの激しい毒舌。
今日もクルーはふたりを遠巻きにして高みの見物としゃれ込んでいる。そのどの顔もドキドキ、ワクワク、期待顔。
「あ、オマエまたアスパラ食わね〜のかよ!好き嫌いしてっとムネ大きくなれね〜ぞ!」
「余計なお世話よ!アンタそんなにお腹空いているならこれ全部あげるから!」
ガタンと席を立つミリアリア。
「おい!ちょっと待てよ!」と焦るディアッカ。あわてて後をついてゆく。
───やった!今日はオレ等の勝ちだ!ハウが先に席を立ったから10アードよこせ!
アイツも情けね〜よなあ!ハウにはホント甘いから。
昨日はディアッカがハウより先だったけど・・・ホントあいつら見てて飽きね〜よなぁ〜!
食堂中を10アード札が飛び交っている。
この先の未来があまりにも暗いから。
いつどうなるのかわからないから。
ついつい救いを求めてしまう。
ナチュラルのオンナとコーディネイターのオトコ。
この2人の様になれるなら・・・
まだ、間に合うのかもしれない。
わかり合えるかもしれない。
ナチュラルもコーディネイターも共に暮らせる世界。
そんな世界を夢見てもいいかもしれない。
『HOT SPOT』
それはまさにデンジャラスゾーン。2人の所は『絶対に立ち入り禁止区域』
AAのクルーなら、誰もが知っている究極の区域───。