ディアッカまだ起きてるかな・・・・



ミリアリアは急ぎ足でディアッカの部屋へ向かっていた。
時刻は既に夜も12時をまわっている。
でも、どうしても今日中にディアッカに頼みたいことがあったのだ。
ノートPCが突然動かなくなった。
明日までに調べたいことがあるのにこれではどうしようもない。

(誰か詳しいひといないかな・・・)

そして、思い浮かんだのがディアッカだった。






───PON♪






「どうぞ。開いてるから」




「あの・・・遅くにごめんなさいディアッカ・・・」

ミリアリアは申し訳なさそうに言いながらディアッカの部屋にに入ってきた。





「どうしたんだよこんな遅くに・・・」

ディアッカは呆れたような声でミリアリアに言う。

部屋の照明は落とされ、オレンジのライトが柔らかく瞬いている。
シャワーを浴びた直後なのだろうか。
彼がベッドに腰掛けて飲んでいるのはブランデーらしい。
上半身は裸で、タオルドライだけの金髪は綺麗なウェーブを描いている。
確かにこんな時間に訪問したのはまずかったようだ。

ミリアリアはちょっと顔を赤らめて、
「あの・・・ごめんなさいまた出直してくるわ・・・」
そう言ってあわてて立ち去ろうとした。





ディアッカは一瞬躊躇したが・・・。





「いいよ・・・入っておいで」

立ち上がり、ブランデーグラスをナイトテーブルに置くと、上着を羽織ってミリアリアの傍に来た。

「何?PCのトラブル?」
ミリアリアのノートPCに目を止めてディアッカは尋ねた。
「うん・・・全然動かないの。昨日まで何ともなかったんだけど」
「ちょっと貸してみな」
ミリアリアからPCを受け取ると、電源を入れ起動させる。
なるほど全く動かない。
「バックアップはとってあるの?」
「うん。それは大丈夫。ここにあるから」
ミリアリアは1枚のディスクをディアッカに見せた。
「そう。じゃぁちょっとバラすぜ」
ディアッカはドライバーを取り出すとPCの接続部を取り外して中を探る。
真剣な瞳は長い睫に遮られ半分しか見えない。
「ああ・・・やっぱりそうだ」
早くもトラブルの箇所を見つけたらしい。
「大丈夫?直るの?」
ミリアリアは心配そうにディアッカを見守る。
「ああ。・ホコリが電気接続の邪魔をしてるんだよ。すぐ終るよ」
精密機械用のエアクリーナーでホコリを取り除いて元に組み立てる。
電源を入れるとPCは何事も無かったかの様に起動した。

「よかった・・・ありがとうディアッカ!」
ミリアリアは心底嬉しそうに礼を言って、ディアッカに瞳を向けた。




オレンジのライトがミリアリアの瞳に反射する。
やわらかな蒼い瞳がディアッカを捉えた。
その蒼にディアッカの瞳は釘付けになる。

初めてミリアリアに出会った時に見つめた蒼だ。





南のオーブの海の色。





───海よりも深い蒼。






あたたかいミリアリアの蒼い瞳。






「どうしたの・・・?ディアッカ」
何も言わないディアッカにミリアリアは不安を感じた。

ディアッカは、そのまま動こうとしない。
ほの暗さが映し出す紫の瞳はミリアリアを見つめたたままだ。
その瞳の冷たさに・・・ミリアリアは思わず後退りをする・・・。
そしてディアッカの腕がほんの少しだけ動いた。

いつもと違うディアッカの気配に「何か」を感じた.。






───あ、ごめん・・・。



「悪い。酒に酔ったみたい。ちょっとボーッとしちまったわ・・・」

ディアッカはすまなそうにミリアリアに告げると、長い睫を伏せた。

「あんたがお酒を飲んでるところなんて初めて見たけれど、それ・・・少し強いんじゃない?」
ディアッカはお酒のせいで、何時になく無口なのだろうか。
「いや・・・そうでもないんだけど。オレも疲れてんのかね・・・」
ディアッカがひとつ溜息を吐く。

そんなディアッカの様子を見てミリアリアは、ごめんなさい・・・と謝った。
「本当にごめんなさい・・・無理させて悪かったわ。もう帰るからあとはゆっくり休んでね」
PCを抱えてミリアリアはペコリと頭を下げた。

「おまえのせいじゃないよ」
ディアッカは瞼を閉じたままで答える。

「ミリアリア。これからはもっと早く来いよ。こんな時間にオレのところにいるなんて誰かに見られたら・・・
またウワサになっちまうぜ?困るだろ?」
クスリと笑ってディアッカはミリアリアを見つめた。

「そうよね。これからは気をつけるから・・・おやすみディアッカ」
ミリアリアはそういい残してディアッカの部屋を後にした。

(どうしたのかな・・・変だなディアッカ・・・)

いつもと様子の違うディアッカに、ミリアリアは首を傾げた。





















───さて・・・ミリアリアのいなくなった部屋で、ディアッカは再びブランデーのグラスを傾ける。


いつかのキラの言葉が甦る。


「ねえディアッカ・・・君の自制心ってどこまでもつだろうね・・・」







ライトを映し出した蒼い瞳に吸い込まれていくように・・・手を伸ばしかけた自分が可笑しくて・・・。
手を取ってしまったらきっと・・・離すことなどできない自分がせつなくて・・・。
そして・・・抱き締めてしまったらもう・・・自制心に歯止めのかからないだろう自分が恐ろしくて・・・。






( どこまでもつか・・・そんなの解らないさ。オレにだって・・・)






それらを全て飲み干すかのようにディアッカはブランデーの杯を空けた。















   (2004.10.18)  空

 ※ ディアッカは酒で自分をごまかしています。
    MS乗りが酒なんて飲んでもいいのか?なんてツッコミはナシでお願いします(汗)

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海よりも深い蒼